
現時点で石破政権が報復措置を講じる様子は見られないが、EUに対する20%関税を受けてフランスのマクロン大統領はすぐさま、自国企業に対米投資凍結を要請した。34%もの高関税が課される中国も報復関税を打ち出すなど、早くもトランプ関税は世界中の国々を巻き込んだ貿易戦争に発展している。
だが、トランプ大統領がその手を緩める可能性は低い。米共和党系シンクタンク「ヘリテージ財団」の元上級研究員で東洋大学教授の横江公美氏は次のように話す。
「関税引き上げによる貿易不均衡の是正は30年以上前からトランプ氏が主張してきた政策。第一次トランプ政権では中国からの輸入品に対して段階的に関税を引き上げて米中貿易戦争に発展したことが印象に残っている人が多いでしょうが、日本やEUの自動車や部品に対する関税は交渉の末に回避されただけでした。そこから4年の充電期間を経て、満を持して打ち出した相互関税ですから、“ディール”によって引き下げる余地はあっても、引っ込めることはありえません。商務長官にラトニック氏、財務長官にベッセント氏と、いずれもウォール街でその名が知られた人物を起用していることからも、株式市場の混乱は当然、想定していたものだったはず」
リーマンショック以来の高水準
もはや「混乱」というレベルではないように見えるが、野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは「いまだ調整相場の範囲内」と分析する。
今年の高値からの下落率をみると、欧州やアジアの株式などと比べて、日経平均が24%、S&P500が17%以上と、日米の下げが際立っている。
「背景にあるのは、2年に渡って続いた日米の株高。S&P500は2年で53%も上昇し、日経平均も54%高。その値上がりによってポジションが膨らんだので、今回、調整の売り物が大きめに出たかたち。米個人投資家協会の調査では、今後6か月の米国株の見通しを『弱気』と答えた投資家の割合がリーマンショック以来の高水準に達しているほか、4日の急落でS&P500のPERが10年平均PERを下抜けました。過度にリスクを織り込んできている様子が見えるので、いったん、調整一服となる可能性もあります」