日本銀行の大規模な金融緩和(異次元緩和)の副作用が懸念されている。政府の借金である国債を大量に抱え、日銀自身の財務が悪化したりするリスクが指摘される。そのツケは、いずれ国民が払わされる。
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「継続することが適当だ」
4月9日に就任した日銀の植田和男・新総裁は就任後初の記者会見でこう述べ、大規模緩和を続ける考えを示した。
大規模緩和は2013年4月に黒田東彦(はるひこ)・前総裁のもとで始まった。その主な手法のひとつが、国債を大量に買い入れることだ。
日本経済は長く物価が上がらないデフレに苦しんできた。市場で国債を大量に買うと国債の価格が上がり、金利は下がる。金利を低く抑えれば、家計や企業はお金を借りやすくなり、消費や投資が活発になる。
すると景気はよくなり、物価も上がるというもくろみだ。
しかしそれでも、物価はなかなか上向かない。そこで日銀は16年9月にそれまでの大量の国債を買う政策から、金利が上がった(国債の価格が下がった)ときに国債を買い支える政策に修正した。「長期金利操作(イールドカーブ・コントロール)」と呼ぶものだ。
買い入れの「量」から「金利」を重視する政策に変えたことで、国債の買い入れ額はいったん減った。
ところが昨年のウクライナ侵攻後に一段と進んだ物価高を抑えるため、欧米の中央銀行が相次いで金利を上げ始めると、日本の市中金利も上がりだす。そこで日銀は金利を低く抑え込む政策を続けるため「指し値オペ」の毎営業日の実施を決めた。指し値オペは、一定の水準に定めた長期金利の上限を超えないように、国債を無制限に買う取り組みだ。
その結果、国債の買い入れ額は一段と膨らみ、日銀の保有国債(国庫短期証券を除く)は22年12月末に約547兆円と、10年前の約91兆円から6倍に増加。発行残高に占める保有割合も11.48%から52.02%に達した。
国債を大量に抱え込んだことで、心配されているのが日銀自身の財務状況だ。