
アメリカのトランプ大統領が、米国に輸入される全自動車に25%の関税を課すと発表した。トランプ氏が仕掛ける“貿易戦争”は今後、どのような影響をもたらすのか。AERA 2025年4月7日号より。
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【前編はこちら】“関税男”トランプ氏「脅し」としての関税政策 “貿易戦争”日本直撃で経済に大打撃
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今回の「貿易戦争」によって世界全体で何が起きるのか。
トランプ政権の1期目で、関税が課されたときには、迂回路がたくさん発生した。中国からベトナムなど第三国。そして第三国から米国へといった具合だ。
日本も1980年代に輸出自主規制(VER)に基づき、対米自動車輸出を制限することで、米国の高関税賦課を回避したことがある。81年に初めて自動車輸出の制限に同意。輸出は前年比約8%減少したものの、リスクを抑えることに成功した一例で、今回は中国がその戦略を踏襲する可能性が生じている。
昨年12月、『フォーリン・アフェアーズ』に“How Tariffs Can Help America”(関税はいかにアメリカを助けるか)という論説を寄稿した経済学者マイケル・ペティス氏は、こう指摘する。
「貿易を扱う場合、一国に対する関税や一般的な二国間関税の視点からだけみるのは、まったく時間の無駄で、貿易不均衡に何の影響も与えない。これから起きるのは迂回路のような貿易のシフトだ。だから私は、25年のアメリカの貿易赤字は、24年よりも拡大すると予測する」
つまり、関税政策は必ずしも成功するとは限らないのだ。にもかかわらず、動き始めたトランプ氏の関税政策。我々は、その中を生きていかなければならない。どうすればいいのだろうか。