
新しいイノベーション
経済社会理論家で、欧州連合、中国、ドイツのメルケル前首相をはじめ、世界各国の首脳・政府高官のアドバイザーを歴任してきたジェレミー・リフキン氏の言葉を紹介しておこう。
リフキン氏は、3Dプリンターによる積層造形がいかに「無関税」であり、海上、航空、陸上輸送を根底から覆すかを力説している人物だ。
「エアバス、シーメンス、フォルクスワーゲン、ボーイングなど、3Dプリント技術の活用を先導するフォーチュン500企業が増えている。この技術は、海上、航空、陸上輸送や物流、関税の高額なコストを回避し、業界や大陸をまたいで豊かな経済交流を行っているハイテク中小企業に有利である」
例えば、風力タービン、ソーラーパネル、自動車部品、手術器具、建築モデル、航空宇宙部品。いずれも3Dプリント技術で製造される数多くの新製品ラインのほんの一例だ。
「3Dプリンターによる積層造形を追求するハイテク中小企業は、インキュベーター・プロジェクトや新興企業を導入する際の先行研究、調達、マーケティングコストを根本的に削減し、関税を回避しながら、限界費用ゼロに近いコストで迅速に世界規模に拡大することができる」(リフキン氏)
トランプ氏の気まぐれな関税政策に振り回されるのではなく、これを奇貨として新しいアイデアやイノベーションが生まれるのを期待してやまない。(ジャーナリスト・大野和基)
※AERA 2025年4月7日号より抜粋