和田静香さん(撮影/朝日新聞出版写真映像部・佐藤創紀)
和田 なかなかそこまでは行けないなあ。だって人はそんなに理想どおりにはいかないから……。
小川 そうじゃないと「何が何でも戦争はしない」っていう僕の言葉は、背景を失うんです。こんな相手なら殴ってもいい、殺してもいい、ってことになっちゃう。
松尾 元からそういう主張じゃなかった人が変節していく。その姿を見て、なぜ変わったのか、その理由もわかってきたとして、だからこそなおさら「じゃあ説得も難しいなあ」と絶望することはありませんか?
「そういう理由で反対していたのか。ならばどうしたってこの人を説得するのは無理か」と。
小川 それは多々ある。だって、465人衆議院議員がいて、全会一致っていうことは稀なんだから。
賛成する人も反対する人もいていい。だけど、選択的夫婦別姓問題っていうテーマに限って言えば、党議拘束をかけるようなテーマですか? と自民党はじめ各党に問いただしたいですね。これはイデオロギーというよりテクニカルな問題です。
賛成する人と反対する人がいるのは自然なことだけど、党利党略で、党議拘束をかけていいテーマですか?っていうことは、政治的に議論しなきゃいけないと思う。
テーマによりけりだと思いますよ。「全員が賛成、全員が反対はおかしい」っていう単純な議論とは一線を画さないといけないし、いろんな考え方や利害、背景があっていい。それぐらい達観しないと、自分がしんどいですよ。
松尾 「51対49」で、自分に言い聞かせるってことですか。
小川 そう、社会は多様である。人はそれぞれだ。
和田 結論が出ましたね。
松尾 小川さんらしい言葉ですね。
和田靜香『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(朝日文庫)>>書籍の詳細はこちら
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誰もが分かり合え、生きづらさを感じなくてよい社会にするためには、人と人が、互いの考えの違いをどう乗り越えるかにかかっている。
「個人の問題はすべて政治的であり、悩みや苦しみは政治と地続きである」という和田静香著『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか』にも通底する議論は、参加者・視聴者の大きな共感を得ていた。
(文・黒川エダ)
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