左から松尾潔さん、大島新さん、小川淳也さん、和田靜香さん(撮影/朝日新聞出版写真映像部・佐藤創紀)
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世田谷のブックカフェで開催された、立憲民主党・幹事長の小川淳也氏、ドキュメンタリー監督の大島新氏。聞き役のフリーライター、和田靜香氏の3人による政治鼎談。今回はその3回目をお届けする。

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 大島氏は小川淳也氏に密着したドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年公開)を監督。

 和田氏は2021年から22年にかけて小川氏に「政治を知りたい!」とガチンコ対談を申し入れ、『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』を上梓。同書は昨秋、大幅加筆され、文庫版(朝日文庫)として発売された。 

 その両者が小川氏を交えて「今」の政治や情勢について語り合う鼎談。ぶつかり合う価値観やイデオロギーの相違に話題が及んだところで、会場から和田氏の文庫時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか(以下『時給はいつも最低賃金~』)の解説を執筆した松尾潔氏が飛び入り参加する展開に。

左から大島新さん、小川淳也さん、和田靜香さん(撮影/朝日新聞出版写真映像部・佐藤創紀)

 会場内からの質疑応答が始まった。来場者から、SNS上の情報について、どう受け止めたらいいのか、との質問が飛び出した。 

来場者 一般市民が、さまざまな社会問題について考えるとき、自分たちには何ができるのか、っていうことを日々考えているんです。 

小川 あと40%の人が投票に行ってくださると、世の中が一発で変わると思うんですよ。これは民主党政権時代の責任が大きいんだけど……2009年に民主党が政権を取った時の投票率は70%だった。ところが多くの人が民主党政権にがっかりしてしまい、それ以降、どうがんばっても投票率が50%までしかいかない。1/2民主主義になっちゃったんですよね。

 北欧のように投票率が90%になれば、あらゆる課題は解決できる可能性が増し、国民の意思が直接政治に反映されて、国民と政治が交われるようになるんじゃないかと期待してるんです。難しいんですけどね。

大島 それについては、私、小川さんに反論がありまして。投票率が上がったからといって、小川さんの思うような世界に果たしてなれるのか? 今回(昨年11月)の兵庫県知事選挙も、過去より15ポイントほど投票率が上がった。でも結果は斎藤(元彦)さんの再選だった。 

和田 みんな、もう、「選挙に行こう」って言えなくなったと、ビクビクしていますよね。選挙に初めて行った人たちが石丸(伸二)さん、斎藤さんに投票した。政治を語るより、政治の前段階というような、自己啓発のような、与太話のようなものを語られた方がいい。政策なんて邪魔っていうか、政策語るのはオールド政党とか。 

小川 だからこそ90%なんですよ。10や20ポイントが上がっても、ある種のまやかしに惑わされる可能性はまだある。しかし90%ともなると、ごまかしは効かないんじゃないかと。

 逆に、投票率が90%になってもなお、政治が悪くなるというなら、辞めます。もうやっていられない。なにをよすがにこの仕事を、この仕組みの中でやるのか。投票率90%が危険だとか不安だと思うなら、この仕事はもうできません。
 

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