記者が取材し、発信するまでが丁寧に描かれる。新聞紙面だけではなく、動画なども駆使して多角的に発信する様子に注目だ(撮影/写真映像部・松永卓也)

 ドラマ、舞台、歌と幅広く活躍する松下さんだが、どれも言葉を扱う仕事。記者との共通点も見いだせたという。

「僕らは作品をつくる中で、嘘をつきたくないという思いがあります。フィクションの世界とはいえ、見ている方にいかに本当のこととして届けられるかが勝負なんです。そういった意味では、真実を追い求めるパワーというのは記者と通じるものがあるかもしれません」

 それは、CMのテーマでもある「言葉を届ける」うえで大切な姿勢だ。

「言葉は時に誰かを励ましたり、笑顔にさせたりする半面、それが誰かを傷つける凶器にもなりうる怖さを持っているということはいつも忘れずにいたいなと思います」(松下さん)

親戚が朝日新聞の記者

 見上さんは、入社5年目の記者、春田あやめを演じた。地方配属から本社に異動したばかりで、朝日新聞が連載する特集「8がけ社会」を担当する若手記者の役だ。フレッシュな笑顔で取材先とすぐ打ち解ける、見上さんの魅力を存分に生かした役どころだ。

 この撮影には奇縁を感じていたと話す。

「実は、親戚が朝日新聞の記者だったんです。私が幼いころの記憶ですが、ものすごく忙しそうで、だけどたくさんの仲間に囲まれていた光景を覚えています。同じ記者を演じるとなって運命を感じましたし、身を粉にして働いていた親戚を思い出して身が引き締まりました」

 高齢化が進み、2040年に現役世代が今の8割になる。そんな未来を描く「8がけ社会」。春田は労働力の減少に悩む自治体に赴き、取材を重ねる。見上さんは現場に足を運ぶことの大切さをこう考える。

「今回の撮影ではオフィスでの撮影のほかに、取材に出かけるシーンも多かったのですが、ただ座って手だけを動かして発信しているのではなく、実際に足を使い、長い時間を費やして記事を書いているのだと実感しました。SNSなどインターネット上には事実と臆測がごちゃまぜになっているものも多い一方で、新聞は事実は事実として伝えながら、記者の方の考え方や視点が書かれています。読者にとって信頼できるポイントだなと思いました」

 春田が記者になった動機は、高校生のときに地元のお祭りが新聞に取り上げられ、自分たちの町を誇りに思えたこと。CMの中では、そのときの記事の切り抜きを見つめ、思いをはせるシーンもある。

 誰かにとって大事な思い出と一緒に新聞がある。それは見上さんも同じだという。

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