
豊橋商工会議所では「若輩」を補うため小さな会合にも出た
でも、どんな小さな会合でも顔を出す。休日は、街のゴミ拾いにも参加する。これも「誠意をもって向き合う」の一つだ。そのうちに認めてくれて、いまでも付き合いが続く。
その後、岡山や京都、大阪の支店長を務め、間に東京本社で企業財務を支援する事業法人部長も経験。2012年4月、野村證券の社長に就任し、親会社の野村ホールディングスの役員も兼務した。同8月、ホールディングスの代表執行役グループCEOと、野村グループのトップに立つ。この間、「根底から会社をつくり変えたい」という言葉が出た。掲げたのは当然、「顧客本位の営業」だ。香川県で始まった『源流』の流れが、グループへと広がっていく。
「会社をつくり変える」という言葉は、後になって「そんなことを言ったのか」と思うほど、無意識で言った。ただ、10年くらい溜まっていた「みんな、自分の頭で物を考え、自分で判断することを、いつのまにかしなくなっている」との思いが、言わせたのだろう。
営業を「顧客本位」に徹した効果か、トップに立ったときに70兆円ほどだった客からの預かり資産は、4年間で100兆円を超える。2017年に野村證券の会長、2020年4月にホールディングスの会長に就き、代表権は社長へ渡して経営を監督する側へ回った。でも、社員に求めることは、変わらない。
「自分のやっている仕事に、誇りを持ってもらいたい。おカネという命の次に大事なものを託していただくという、それにふさわしい人間になってほしい」
誠意をもって客と向き合い、正しいと思うことを貫く。『源流』からの流れは、後輩たちも巻き込んでいく。(ジャーナリスト・街風隆雄)
※AERA 2025年3月31日号