「インバウンドに関しては、もう少し伸びしろがあると考えています。中国人観光客の訪日は、まさにこれから本格化します。円安が進んだことで、インバウンドにとって日本の物価は驚くほど安くなっています」
銀行の先行きについては、少々厳しくなると窪田さんは捉えている。23年3月期の上振れ(予想値超過)が業績拡大のピークとなりそうだという。
「日銀のトップが植田(和男)新総裁に交代し、金融政策の軌道修正が進められることになります。加えて、シリコンバレーバンクの破綻を機に、銀行の資金調達コストが上昇しています」
一方、不祥事関連はそれぞれで状況が異なり、今後も順調に回復基調を示すか否かについては、あくまで個別に見解が分かれる。インバウンド関連とともに窪田さんが強気のスタンスで見ているのは資源関連だ。
■好調持続で株価上昇も
「足元の金価格急騰が象徴的であるように、資源価格は再び上昇基調に戻る可能性があります。これまで続けられてきた利上げで、先進国経済は減速傾向にあります。しかし、ウクライナ侵攻に対する制裁で世界経済の分断が進み、いまだに資源価格に影響が出ているほか、中国経済再開の動きが続いており、需要拡大から上昇圧力は続くでしょう」
つまり、今後もインフレの傾向が続きやすいということだ。それが現実となれば、米欧で利上げが継続される可能性がある。日本との金利差拡大から、為替相場で円安が定着することも十分に考えられよう。
ともあれ、決算結果が事前の業績予想を上振れるという着地は、言わば「うれしい誤算」である。そして、引き続き追い風を受けて好調が続きそうなら、株価の上昇も期待できそうだ。ただ、早くも第3四半期決算を発表した時点で上振れが確定的なのだから、すでに株価にその事実が反映されている確率も高い。
そこで、表には各社の年初来安値(今年に記録した最安値)を記載しておいた。上振れ必至だからとむやみに飛びつくのではなく、ここまでの株価の推移もきちんと確認しておきたい。さらに、窪田さんは注意を促す。
「今期の業績予想に関しては、例年にも増して慎重な数字を出す企業が多いかもしれません。3月の日銀短観(全国企業短期経済観測調査)では、大企業製造業の景況感が前回調査(12月発表)よりも明らかに悪化していました。しかも、先行きにもさほど改善がうかがえません」
やはり、米欧経済の減速を警戒している様子だ。これに対し、比較的堅調だったのが大企業非製造(サービス)業で、インバウンド関連もここに該当する。(金融ジャーナリスト・大西洋平)
※AERA 2023年4月24日号