スーさんの歌に合わせて会場全員で「M」を合唱。最後に「奥居香でした! ありがとう、超気持ちよかった」とスーさん(撮影:上飯坂 一)

 そして生オーケストラがアース・ウインド&ファイアーの「セプテンバー」のイントロを奏で、テープシューターが金色のテープを放つと、会場は「ギャー!」という歓声に包まれる。

 ピンクの衣装に身を包んだジェーン・スーさんと堀井美香さんが登場し、会場中央でハイタッチする。

「みなさま、よくぞよくぞ、日本武道館までたどり着きました!」(スーさん)

「みんないらっしゃい、よく来たねーー!」(美香さん)

メールではなを啜る音

 すでにクライマックスのようなオープニングの後は、いつもの番組のようなトークコーナーだ。ルーレットを回してトークテーマを決めていく。「私のブルースがくだを巻く」というテーマで、スーさんが15歳のときに妄想の中の新宿・歌舞伎町を舞台に書いた詩「靴とあんた」にスーさん自身が曲をつけて披露。ブルースといいつつ、なぜかフォーク調の曲を哀切なクラシックギターの伴奏で歌う。しかしスーさんが胸元からブルースハープを取り出して吹きはじめたら、一気にブルースの世界になった。

「マイ・ウェイ」を熱唱する堀井さん。その横では紙切り芸の林家二楽師匠、八楽さんが「マイ・ウェイ」に合わせてリズミカルに紙切りをするというカオスな世界が展開された(撮影:上飯坂 一)

 対して、白いドレスに衣装替えした堀井さんが歌ったのは「マイ・ウェイ」。タメを作ったところで笑いが起こりつつも、白いスモークの上を歩きながらの低音を利かせた歌唱は、まるで紅白歌合戦の大トリのようだった。

 そして再度のトークコーナー。「この5年間どうでしたか?」というテーマで互助会員から寄せられたメールを二人が読む。一人娘の闘病を支える女性。両親の介護と不登校の娘のケアをする女性。武道館は一気に静まり返り、はなを啜る音がさざなみのように寄せては返す。

「うちら、超がんばった!」(スーさん)

「みんな、えらい!」(堀井さん)

 この5年間で何らかの別れを経験し、そしてそれをしっかり受け止める時間がない人へ「『靴とあんた』じゃない歌をささげたいと思います」とスーさん。「じゃあ私、ピアノ弾いていいですか?」と堀井さんが受け、奏でられたイントロはプリンセス プリンセスの「M」だった。

次のページ
メールは4年半で3万通超え