
最後のプログラムは、ベートーヴェン「歓喜の歌」の会場全体での合唱だ。
開演前に事前練習で会場を温めてくれた合唱指導の清原浩斗先生が登場。軽妙な大阪弁で会場をリラックスさせてくれる。独唱は番組公式ソング「希望のスンス」も歌う日本を代表するテノール歌手の秋川雅史さん。まさに「OTS8千人の第9」が実現した瞬間だった。
4年半で3万通超え
舞台上にひとつの椅子が登場した。これはエピソード218で読まれた、「OTS」について「誰もが座れる空席がそこにあるように感じた」「すべてのリスナーに空席を用意し続けてくれる二人に心から感謝する」という一通のメールを受けたもの。マイクオフの声でスーさんが、「いつでも帰ってこられる席、必ずここにおいておきます」と言って、椅子を舞台中央に置いた。

番組開始から4年半で、寄せられたメールは3万通を超えたという。「歌って踊れる」という表現はあるが、「歌って踊ってメールを読む」。これが「OTS」イベントの基本だ。
リスナーからのメールに共感したり、共感の一歩手前で「そういうことってあるよね」と思いながら、日常生活の固定的な人間関係の網の目で凝り固まった心が少し動く。離脱してもいいし、帰ってきてもいい。いつでも誰でも座っていい席があり、帰ってくればいつもどおりに二人が話している。
なぜ、「OTS」がここまで支持されているのか、その秘密を垣間見た公演だった。(編集部・小柳暁子)
※AERA 2025年3月24日号

