「つまらない」「伝わりづらい」「バカバカしい」など、芸人たちのネタに少しでもスキがあれば、千鳥は容赦なくそこを突いてくる。でも、その追い込み方に熟練の技がある。

千鳥のコメントは速くて鋭い

　VTRを見ているときの彼らのコメントは、どちらも恐ろしく速くて鋭い。一般的には、大悟がボケ、ノブがツッコミというイメージがあるかもしれないが、この手の番組では千鳥はどちらもツッコミを担当している。早押しクイズの世界チャンピオン2人が本気のクイズ対決をしているかのような、超人的なWツッコミ・イジリ芸が楽しめる。

　逆に言うと、「千鳥」という器がしっかりしているからこそ、芸人側はのびのびとネタを演じられるし、スタッフ側は多少いびつな形のネタでも彼らの前に送り込むことができる。

　ウケてもスベっても面白い。成功しても失敗しても大成功。この盤石の「千鳥システム」が構築されているからこそ、『千鳥のクセスゴ!』は大ヒット番組となったのだ。

「クセ」とは個性であり、「クセがスゴい」とは多様性の肯定である。『千鳥のクセスゴ！』はあらゆる種類の笑いを包み込むダイバーシティ志向のネタ番組だった。これが終わってしまうのは残念でならない。（お笑い評論家・ラリー遠田）

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