その結果……

●“借金なし”……起農資金を含め一切借金なし
●“補助金なし”……行政に一切頼らなくてもやっていける仕組み
●“農薬なし”……当初から農薬を使わない農法を実践
●“肥料なし”……2012年から無肥料栽培(「炭素循環農法」)に切替え
●“ロスなし”……予約販売、加工で野菜のロス(廃棄)がほぼない仕組み
●“大農地なし”……通常の10分の1以下の耕地面積の「日本一小さい専業農家」
●“高額機械なし”……3万円で購入した中古の農機具がメインプレーヤー
●“宣伝費なし”……これまで一度も有料広告を出したことがない

 と、まさに常識はずれなことに。また、通常1000万円くらいはかかるといわれる初期投資が143万円ですみました。

 現在、労働力は家族2人(野菜の栽培は私、妻がケーキ屋漬物などの加工を担当、子どもは3人)だけで、年間売上1200万円、所得(利益)600万円。フェイスブックなどで、お客さんとダイレクトにつながりながら、日々充実した毎日を送っています。

 今、風来には、農林水産省などの農業行政にたずさわる方から、農家、一般の方まで、全国から視察団が訪れます。

 なぜ、注目されているのか?

 それは、知識ゼロ、経験ゼロで始めた「脱サラ農家」が、家族みんな笑顔でそこそこの収入を地方で幸せに稼いでいる。その秘訣を知りたいようなのです。

 この「幸せに稼いでいる」というのがポイントではないかと思っています。

 現在、ビジネスパーソンを取り巻く社会情勢はますます厳しさが増しています。非正規雇用の増大、東芝、シャープのような大企業であっても経営不振に陥る時代。社会保障費も減額され、年金もどれだけもらえるかわからないなど先行き不安だらけです。

 これまで就農や農的暮らしというと、売上・利益度外視の自然回帰、あこがれという部分が大きかったかもしれませんが、これからは将来への“第2の井戸(収入源)”として、安心感の醸成、将来不安のリスク分散ととらえる――そんな時代になってきたと思います。

 文字どおり地に足をつけ、直接「食」を得られる「農」は、何にも代えられない安心感がありますし、定年はなく、身につけた知恵は誰にも奪われません。特別じゃない、リアルな選択として気づいた人は、どんどん農に向かってきています。経験もない、資金もない、大きな農地もない、販売ルートもない――そんな“ないないづくし”の元会社員が、ゼロから起農したからこそ、固定概念にとらわれず、農にチャンスを感じられました。

 現在会社員で農にあこがれはあるが、敷居が高いと感じている方、農家になったけど、なかなかうまくいっていない方、新たなビジネスの芽を探している方、また、定年後に不安をかかえている方に、『農で1200万円!』が少しでもお役に立てればと思っています。

 実際、風来に話を聞きにきて起農している人が全国にいます。ただし、風来では、長期研修を受け入れたことがありません。

 どういう意味かというと、技術ではなく考え方次第で、小さくても農業で稼ぐことができるということです。もちろん、技術も大切ですが、技術が最優先するのなら、“技術ゼロ”から始めた私が今こうしてやっていられるはずがありません。

 新規就農時の研修で車を路肩に何回も落とし”脱輪王”の異名をつけられ、何度も「落第!」と言われた私でもここまでやってこれました。そんなこれまで培ってきた考え方、気づいたこと、実践してきたことを、新規就農者や農家仲間の事例も併せて、余すところなく『農で1200万円!』で紹介させていただきました。

 農の無限の可能性を感じていただき、農で幸せに稼ぐ人がたくさん出てくる。本書がそんな手助けになればと願っております。