もりした・えみこ/イラストレーター・漫画家。第4回コミックエッセイプチ大賞受賞。2024年に『45歳(独身)、どんな感じ?』出版。自身の日々を4コマ漫画にしてくれた(イラスト:森下えみこ)

東京に行けば変われる

 このまま独身か、それとも結婚するのだろうかと思いを巡らせていましたが、本音は結婚したくなくて。家庭を持つことに自信がなかったんです。自分のことを知らない都会に行きたいと思う中、会社員として働きながらイラストレーターの仕事を始めたのもこの頃です。そして、30代でコミックエッセイを出版でき、「これは仕事にできる!」と思えたときはうれしかった。会社員を辞めてフリーランスになり、ずっと住んでみたかった東京に引っ越すことを決めたのが40歳の時でした。

 東京に住むことは、20代の頃から憧れていました。「東京に行ったらきっと変われる」と期待する一方で、実際に行っても何も変わらなかったら次の手はもうないかも……という怖さも同時にあって。要は「どっちにしろ不安」なんですね。それだったら、「新しい不安の方がいい」と思い、「引っ越し、イエーイ!」みたいな感じで上京しました。

 その時は、ある程度の貯金と仕事がある状態でした。その基盤がない状態だったら「東京に来ているのに仕事がない」「他のコミックエッセイ作家は活躍しているのに私は……」など、結局何も変わらない重圧に押し潰されていたかもしれません。だから、40代での上京が、私にとってはちょうどいいタイミングだったと思います。

(構成/フリーランス記者・小野ヒデコ)

AERA 2025年3月3日号より抜粋

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