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本年度米アカデミー賞6部門にノミネートされた「ANORA アノーラ」。監督のショーン・ベイカーが「巨匠として敬愛している」という監督・是枝裕和と交わした対話とは──。AERA 2025年3月3日号より。
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──映画「ANORA アノーラ」はストリップダンサーでセックスワーカーのアノーラが、ロシア人富豪の息子と恋に落ちる現代版シンデレラストーリー。是枝さんは昨年のカンヌ国際映画祭の審査員の一人として、本作を最高賞パルムドールに選出した。
ショーン・ベイカー:僕は「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」を撮影する際に是枝さんの映画「誰も知らない」などの作品を研究したんです。是枝さんは子どもの生の感情を芝居っぽくなく説得力を持って引き出すことができる。巨匠として本当に尊敬しています。
是枝裕和:こちらこそ! さきほど久しぶりに「アノーラ」を見返して、ますますユーリー・ボリソフ演じる無口な用心棒、イゴールのファンになりました(笑)。ベイカー監督の作品はいつも全ての登場人物が描かれた時間以外にもちゃんと生きていて、そこにいるように感じられる。説明的でなくちゃんと彼らの背景や人生がみえるのが素晴らしいんです。今回はラストで人物の心情に合わせるように車の外にだんだん雪が積もっていくシーンが印象的でした。あれはどうやって撮ったんですか?
ベイカー:あのシーンは本当にあの通りに脚本を書いたんです。CGは使っておらず、ひとえに美術班とプロダクションデザイナーの仕事のおかげです。ただ本物の雪ではないんです。幻想を打ち砕いてしまったとすると申し訳ないのですが(笑)。
二人の作品の共通点
──ベイカー監督は「フロリダ~」「レッド・ロケット」そして本作といずれもセックスワーカーを登場人物に、社会の枠から外れた人々を、ときに笑いを誘いながら生き生きと描き出す。是枝監督もまた「誰も知らない」「万引き家族」など同じ視線を持っているように感じる。
ベイカー:おっしゃる通り、私たちの作品には共通点が多いと感じます。僕は同時代の監督のなかで、特に是枝さんに親近感を覚えるんです。似たテーマを似たアプローチで描こうとしているのではないかと。私がスポットを当てたいのはアメリカンドリームを追求することを許されない人々です。貧困や差別、社会的ステータスゆえに幸福や富の追求が許されないなんてフェアじゃない。常にその問題が僕の中で頭をもたげています。彼らもほかの人々と同じように夢を見たり希望を抱いたりする。それは語るべきストーリーに値すると思います。
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