
2028年に衝突するかがわかる
小惑星2024YR4の危険性を正確に評価するためには、大きさをより正確に推定する必要がある。
そのため、欧州宇宙機関(ESA)は大型の宇宙望遠鏡「ジェームズ・ウェッブ」で観測することをNASAに提案し、了承された。今年3月上旬と5月に観測を行い、2024YR4の大きさと軌道を絞り込む予定だ。
しかし、浅見さんは、「衝突するのか、しないのか、確定できるデータを得るのは難しいかもしれません」と話す。
2024YR4は秒速13キロ(マッハ39)という猛スピードで移動している。現在、地球最接近時の予想時刻には約5時間の幅がある。その間に小惑星は約23万4000キロも移動する(地球の直径は約1万3000キロ)。そのうえ、地球も移動する。
「小惑星がどの方向から接近してくるか、ほぼ正確にわかっていますが、衝突確率を確定するにはどのタイミングで地球に接近するのか、正確につかむ必要があります」(浅見さん、以下同)
2028年、2024YR4は再び地球に接近する。それに向けて、国際的な天文台のネットワークで精密な観測が行われ、詳細が判明すると、浅見さんは期待する。
「32年に衝突する可能性は0%か、それとも100%なのか。3年後にわかるでしょう」
小惑星が地球に衝突するとしても、被害を抑えるためにできることはあるという。
秒単位の精度で衝突時間がわかれば、衝突位置をかなり正確に推測できる。
「そうすれば、推定された衝突地点から、住民を避難させることができる。小惑星にスペースガードクラフト(宇宙機)を高速で衝突させ、軌道を変える技術の実証実験も行われています」

現実的な対策は「住民避難」
小惑星などの衝突から地球を守ることを、「プラネタリーディフェンス」という。
欧米各国は政府機関がプラネタリーディフェンスに取り組んでいる。日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA)から委託された日本スペースガード協会が主に観測を行っている。
「小惑星衝突は避けがたい自然災害です。社会課題として取り組むことが望ましい」
2024YR4の接近に向けた取り組みは「プラネタリーディフェンスの試金石になる」と、浅見さんは見る。
もしも衝突が確実だと28年に判明しても、2024YR4の軌道を変えるための宇宙機を準備する期間としては、あまりにも短い。住民避難が現実的な対策となりそうだ。
「今のところ、この小惑星が地球に衝突するかしないか、誰にもわかりません。事態を注視するしかありません」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

