精神的に安全だと思ってどう大学に通えるのか
トランプ氏の大統領就任以後、ニューヨークではかなり珍しい大規模なデモ。しかし、参加者は、白人のベビーブーマー世代がほとんど。2020年に黒人男性が白人警官に首を圧迫されて死亡した事件後に広がった「黒人の命は大切だ(Black Lives Matter=BLM)」運動のほとんどのデモでは、従来デモの主役だった白人ベビーブーマーは、姿を消していた。その代わり、若い人がSNSを駆使して運動をリードし、黒人、ヒスパニック層など人種的マイノリティーがデモを広げていた。しかし、17日のデモに彼らの姿は極めて少なかった。ケリーさんも含め参加者は、デモに対するトランプ支持者などの攻撃を恐れた市民は少なくないと証言した。
「デモに来るのは怖い。でも私は白人にみえるから攻撃される危険は少ないと思った」
と、別のヒスパニック系の白人女性が話してくれた。
大学生で白人のパメラさんは、聖域とされている大学キャンパスでも混乱が広がっていると言う。
「人種的マイノリティーやLGBTQの友人は、夏からのインターンシップが企業側からキャンセルされるかもしれないと恐れている。トランプが多様性を排除する政策を取る限り、彼らにとってその後の就職もすごく難しいかもしれない。そういう友達が隣に座っていて、どうやって精神的に安全だと思って大学に通えるのか」(パメラさん)
「私の大統領ではない」と同時に、「大統領の日に王はいらない」というキーワードも多くの手製プラカードに登場。ワシントン、カリフォルニア、テキサス、フロリダなど全米18州で同時多発的にデモが起きた。デモを呼びかけた団体「50501ムーブメント」などは、「トランプ政権の民主主義と法に反する政策と、金権政治に便乗する賛同者たち」に反対するのが目的としている。
(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)
※AERA 2025年3月3日号より抜粋
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