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「破壊的で分断を生むDEIの強制をやめる」。大統領就任前日にこう述べた通り、トランプ氏が多様性・公平性・包摂性(DEI)政策の見直しを進めている。米国民の生活に影響が出ている。AERA 2025年3月3日号より。
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ジョージ・ワシントン初代米大統領の誕生日を祝うはずの祝日「プレジデンツ・デー」の2月17日。全米で多くの市民が「(今の大統領は)私の大統領ではない日(ナット・マイ・プレジデンツ・デー)」と、トランプ政権に反対するデモを取材した。
ニューヨーク・マンハッタンでは零下の極寒の中、1万人超が行進。「ファシズムは要らない」「イーロン・マスクを強制送還せよ」「トランプはプーチンのポチ」とシュプレヒコールを上げながら練り歩き、「恐怖政治」「寡頭政治」といわれるトランプ氏のホワイトハウスを糾弾した。
「ノー・クーデター(クーデターは許さない)」という手製のカードを掲げる国連関連のコンサルタント、ケリーさんは、一人でデモに参加し、行進から離れたところに立っていた。
「米国の民主主義を守るために立ち上がらないと。トランプ政権による民主主義の破壊行為は許せない」
と涙目で話す。
トランプ氏による相次ぐ大統領令は、米国民の職や生活に大きなダメージを与えている。
「いきすぎたDEIをやめる」という大統領令では、追随する企業が出始め、従業員がショックを受けている。各省庁からの支援や補助が途絶える見通しとなった今、企業だけでなく大学や学術機関にも大打撃が及んでいる。
ケリーさんも、トランプ政権が海外への支援を打ち切ったため、国連からの開発支援を受けてきたクライアントが打撃を受けているという。
「私は、米先住民の血も混じっている欧州からの移民との混血。祖先は米国の建国よりも前からこの地にいた。でも、トランプ政権が移民を悪者呼ばわりして排除しようとしていることは、米国民主主義への攻撃だと肌で感じる」(ケリーさん)