③NISAと比べると制度が複雑

 資産運用の候補として、まず考えるのがNISA(少額投資非課税制度)とiDeCo、という人は多いだろう。どちらも運用で得た利益が非課税になる点は変わらないが、運用方法にはそれぞれメリット、デメリットがある。

 NISAのメリットは、いつでも自由に資産を引き出せる点にある。流動性が高く、教育資金やマイホームの頭金といった、数年以内に使う予定のあるお金を準備するのに使いやすい。一方で、利益は非課税になるものの投資した金額の所得控除はなく、「利益を出さなければ意味がない」制度ともいえる。

 iDeCoは年金という立ち位置にあるため、受け取りは原則60歳以降だ。また、今回の改正で不要とはなったが会社員や公務員がiDeCoに加入する際には事業主証明書を勤務先に発行してもらう必要があったなど、手続きが煩雑になる点がネックだ。ただし、拠出した金額が全額所得控除の対象になる点は、NISAに対する大きなアドバンテージといえる。

 さらに、事業の失敗や不測のトラブルなどで自己破産した際の扱いも異なる。NISAで保有している株式や投資信託は、投資の一環として保有している商品のため生活に最低限必要な財産とはみなされず、自己破産時は財産差し押さえの対象となる。

 iDeCoは公的年金に上乗せして自分で管理・運用する「私的年金」という位置付けにあり、確定拠出年金法に基づいて運営されている。iDeCoの資産は国民年金や厚生年金と同様に、自己破産をしても差し押さえの対象とならない点は意外と知られていないメリットのひとつだ。

 人生100年時代、ゆとりある老後を過ごすためには自助努力による資産形成が欠かせない。そして、それを後押しするようにiDeCoやNISAといった税制優遇のある国の制度も拡充しつつある。ただし、制度は時代背景にあわせて今後も少しずつ変化していくことが考えられるため、常に情報を追い自分で戦略を立てていく必要がある。

(ライター・森瀧早織)

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