山中氏によれば、「一般的な定年退職年齢が60歳から65歳に引き上げられつつある現状を鑑みた改正」だという。
なお、先に退職金を受け取り、後からiDeCoを受け取る場合は「19年以内」というルールがあり、その期間内の受け取りは二重で控除が適用されないようになっている。現状、iDeCoの加入は75歳までなので、退職所得控除を2回使うためには遅くとも55歳で退職する必要がある。
②加入するならなるべく早いうちがおトク
退職所得控除の計算は前述したとおりで、勤続1年につき40万円もしくは70万円控除される。金額についても今後改定される可能性があるが、退職所得控除のしくみ自体はなくならないだろうと山中氏は語る。そうなると、なるべく早くiDeCoに加入して、勤続年数(拠出年数)を増やしておくほうがおトクといえるだろう。
山中氏によると、毎月5000円、年間6万円の拠出で「40万円分の退職所得控除の枠が買える」と考えれば、拠出下限の月5000円だったとしても、iDeCoに加入するメリットはあるという。また、退職所得控除だけではなく、iDeCoは拠出金額が全額所得控除になるため、拠出した年に収入があるならば、税制優遇も確実に受けられる。
ここで気をつけなければならないのが、iDeCoに拠出するためのお金の捻出が厳しくなるなどして運用指図者になった場合、その期間は加入期間に含まれないという点だ。iDeCoは運用指図者にも口座管理や投資信託の運用にかかる信託報酬の支払い義務が発生する。拠出に対する所得控除も受けられず、退職所得控除にかかる加入期間にも算定されず、手数料だけを支払うことになってしまったらもったいない。
ただし、その心配があるならiDeCoの加入を先送りにすべきかというとそういうわけでもない。「月5000円の掛金の拠出が難しいという場合には収入を増やす、支出を減らすなど、根本的に家計を見直す必要があると考えるべき」だと山中氏は話す。