
2024年12月の制度改正で、企業年金のうちDB等DC(企業型確定拠出年金)以外の他制度に加入している人のiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金の上限額(拠出限度額)が、月額1万2000円から月額2万円に引き上げられた。所得控除のルールの変更について、一部からは「改悪だ」という声もある。これから加入を考える人が注意すべきポイントについて、ファイナンシャルプランナーでCFP®の山中伸枝氏に話を聞いた。
そもそもiDeCoとは誰のための制度か
iDeCoとは「個人型確定拠出年金」の略称であり、その名の通り老後の資産を個人で積み立てる、いわば「じぶん年金」ともいえる。毎月の掛金は全額所得控除の対象となり、投資信託などの運用で利益が発生しても非課税になる。60歳以降に受け取る際も、受取方法にあわせて退職所得控除や公的年金等控除が利用できるなど、税制優遇のある制度だ。
年金の支給開始年齢が引き上げられ、高齢者の医療費の窓口負担も増加しつつある現代に、「老後資金は退職金と年金でまかなう」といった考え方はそぐわない。必要なお金は自助努力での用意が求められる傾向にある。厚生年金がない第1号被保険者や、十分な退職金を受け取れない会社員も老後の資産形成を実現できるように、時代にあわせて設計されたのがiDeCoだ。
2025年(令和7年度)の税制改正大綱では、企業年金のない会社員の拠出限度額が2万3000円から3万9000円増の6万2000円となった。
①退職所得控除は基本的に2回使えない
2025年度の税制改正大綱で退職所得控除のルールが一部変更された。さらにiDeCoは加入可能年齢が70歳に引き上げられ、老齢給付の引き出しに関しては75歳までの好きなタイミングで受け取りが可能だ。受け取りの際は、一時金受け取りなら退職所得控除が、年金受け取りなら公的年金等控除が適用となる。
退職所得控除とは、企業から退職金を受け取る際に退職金にかかる税金が優遇される制度で、控除額は勤続年数が20年超かどうかによって異なり、次のように計算される。