大リーグでは今季からピッチクロックが導入された。試合時間を短縮するための新ルールで、投手はボールを受けてから走者がいない場合は15秒以内、走者を背負った場合は20秒以内に投球動作に入らなければいけない。違反すると1ボールが加わる。一方、打者は残り8秒になるまでに打撃姿勢に入らなければいけない。こちらも違反すると1ストライクが加わる。また、打者の準備が整う前に投手が投球動作に入ることも禁止された。
大谷は4月5日のマリナーズ戦で、投球動作に入るのが早いとして初回にいきなり違反を取られた。打者でも取られ、投打で違反した史上初の選手に。他の選手も試行錯誤を続け、今季の開幕戦15試合では計14度のピッチクロック違反が起きている。
大谷は2試合の登板後のブルペンで、ピッチクロック対策として左足を1歩下げてから投球動作に入る新フォームに挑戦。投球動作に入る始動が早すぎるのを修正するためとみられ、今後の試合で解禁する可能性がある。ただ、新ルールに戸惑いながらも、抜群の安定感をキープしているのはさすがだ。
■菊池雄星から本塁打
打撃でも好調を維持している。9日のブルージェイズ戦で花巻東高校(岩手)の先輩で尊敬する左腕・菊池雄星(31)から3回に今季3号となる2点本塁打。内角低めの143キロのスライダーを左中間に運んだ。昨季から続く連続試合出塁記録を自己最長の32に更新。11試合出場で打率3割、3本塁打、8打点と順調なスタートだ。
前出のスポーツ紙記者は言う。
「投打で大リーグでもレベルが突出している。怖いのは故障だけ。12日のナショナルズ戦で完全休養しましたが、休む勇気も必要です。シーズン前にWBCを戦って疲れも蓄積されている。今月14日から17連戦が待ち受け、6月4日まで試合がない日は3日間のみ。中5日で先発登板を続けるためにも、コンディション調整が重要です」
大谷はWBCの優勝記者会見で次の目標を聞かれ、
「ポストシーズン、ワールドシリーズ、そこで勝っていくのが次のステップだと思いますし、次の大会(WBC)も3年後にあると思うので、自分の立ち位置をキープするというか、もっともっとすばらしい選手になれるように頑張っていきたいなと思います」
唯一無二の極みを目指す求道者の歩みは、まだ道半ばだ。(ライター・今川秀悟)
※AERA 2023年4月24日号より抜粋