「怒れるリーダー」と「穏やかなリーダー」の決定的な違い
『怒れるリーダーと好感の持てるフォロワーについて:リーダーの感情とフォロワーの性格がモチベーションとチームパフォーマンスをどのように形成するか』(2010年、Psychological Science掲載)の研究によると、リーダーの怒りが協調性の低い(競争を好み、対立を恐れず、成果を最優先する)チームのパフォーマンスを向上させることが示された。
実験では144名の参加者を36のチームに分け、リーダーが怒りを示す条件と幸福を示す条件で比較した。結果は明確であった。協調性の低いチームでは、怒りを示すリーダーのもとでパフォーマンススコアが47616点から24446点の範囲で推移し、怒りを示さないリーダーのチームよりも平均で高い数値を記録した。
一方、協調性の高い(調和を重視し、対立を避け、協力して成果を出す)チームでは、幸福を示すリーダーのもとでのスコアが向上し、リーダーの怒りが逆効果であることが確認された。
研究では、リーダーの怒りが仕事負荷に与える影響についても分析された。協調性の高いフォロワーは、怒りを示すリーダーのもとで仕事の負担が増大し、ストレスを感じやすくなった。
統計的な分析の結果、ストレスの増加がパフォーマンス低下の媒介変数となることが明らかになった。つまり、チームの特性を理解し、適切なリーダーシップスタイルを選択することが企業の成長にとって重要だ。
スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクは、リーダーの怒りが企業成長に与える影響を体現してきた。
ジョブズはアップルの創業者として製品の細部にまでこだわり、部下のミスに対して容赦のない批判を行った。「この仕事はクソだ」「お前は何も分かっていない」といった強い言葉を使いながら、部下に最高の結果を求めた。
社内ではジョブズの怒りが恐れられていたが、結果として革命的な製品が次々と生まれた。初代iPhoneの開発時には、何度もデザインや機能の変更を求め、エンジニアに徹夜を強いた。厳しい環境の中で、低協調性の人材が能力を最大限に発揮し、アップルは世界的な企業へと成長した。
イーロン・マスクも同様の手法を用いた。テスラやスペースXでは、非情なまでに高い基準を設定し、部下の仕事ぶりに厳しく対応してきた。エンジニアやマネージャーに対して「能力が足りないなら辞めろ」「お前の考えはバカげている」と公然と批判することもあった。
スペースXのロケット開発では、失敗が続いた際にチームを強く叱責し、限界まで追い込んだ。最終的にロケットは成功し、宇宙産業に革命を起こした。マスクの怒りがチームに強烈なプレッシャーを与え、優れた成果を生み出す原動力となった。
ジョブズやマスクの事例と研究結果は一致している。協調性の低いフォロワーは怒りを示すリーダーのもとで最大限の能力を発揮し、画期的な成果を上げることが可能となる。競争の激しい業界、特にテクノロジーやスタートアップの分野では、リーダーの怒りが企業の成長を加速させる要因となる。
感情のコントロールは重要だが、リーダーが必要な場面で怒りを示し、厳しい要求を突きつけること、時として企業の成功につながることもあるのだろう。
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