「お前はバカ野郎だな」マスクがキレたワケ
あるとき、バッテリーに冷却管を取り付けるロボットのアームに不具合が起こった。マスクは11カ月休みなく働いていた若い技術者に対して、不具合の原因を「おまえか?」と問い詰めた。
しどろもどろになる技術者に、マスクは冷たく言い放つ。
「お前はばかやろうだな。出てけ。戻ってくんな」
数分後、このスタッフはマスクの指示を受けた上司に解雇を告げられたという。
目の前の怠けている人よりも、自分の仕事をきちんとこなしている人を大切にしただけだとマスクは強調するが、こんなことをして本当に現場は回っていくのだろうか。誠心誠意仕事をしていたものの、マスクのあまりの乱暴な言葉で、マスクのもとを離れることになったマイケル・マークスはマスクのテスラCEOとしての働きぶりをこう評している。
《生産工程のすべてを掌握すべきとしたマスクの考えは正しかったと、マークスもいまは考えている。だがマスクの本質に対する疑問にはまだ答えが出せずにいる。必ずオールインしてしまう気性だからあそこまで成功したわけだが、あのひどい言動はすべてその気性から来るものなのか関係ないのか、だ》
《「マスクはスティーブ・ジョブズと同じタイプだと思っているんです。とにかくクソなヤツはいるものだ、と。ところが、ふたりともすごい成果をあげています。で、つい、考えてしまうわけです。『もしかして、あの性格と成果はセットなのか?』と」》
《セットであればマスクの言動は許されるのかと突っ込んでみた。「これほどの業績に対して世界が払わなければならない対価が、くそ野郎でなければ達成できないのであれば、そうですね、たぶん、それだけの価値はあると言えるのではないでしょうか。私はそう思うようになりました」》
《ちょっと考えて、一言追加が出てきた。「でも私自身がああなりたいとは思いませんね」》
(ウォルター・アイザックソン著『イーロン・マスク』)
ブチギレてばかりのリーダーでこそ、成長を果たせるのだろうか。そんなことを研究した面白い研究がある。