ビル・ゲイツの意外なマスク評
マスクは「America PAC」という政治活動委員会を設立し、少なくとも1億3000万ドル(198億円)以上をトランプ支援に投じている。この政治資金は、ペンシルべニア州やウィスコンシン州などの重要なスイングステートでの戸別訪問、メール、電話、郵便物、広告に使われた。
彼のビジネスリーダーとしての手法は「オールイン」(すべて入れる)と呼ばれている。マスクは人類に貢献するために、持ち得るすべてのお金と能力を会社に注ぎ込んできた。
世界人類への貢献を真剣に考える一方で、慈善活動にはほとんど興味を示してこなかった。エネルギーの持続可能性や宇宙開発、人工知能の安全性などを全力で推し進めるのが一番の人類への貢献だと考えているのだ。
慈善活動に打ち込むマイクロソフトのビル・ゲイツが、そんなマスクに慈善活動を持ちかけたこともあった。マスクは、慈善活動への寄付など「1ドルにつき20セント(全体の20%)しか有効に使われない」と考えており、合意には至らなかった。
しかし、それでもビル・ゲイツは「イーロンの言動についてあれこれ思うのは勝手ですが、科学とイノベーションの限界を彼ほど広げている人物は、この時代、ほかにいませんよ」(前掲書)と高い評価をしている。
そう。マスクほど、おのれと、おのれの会社の成長の限界に挑戦し続けている経営者はいないだろう。マスクの考えに従えば、目の前の怠けている人に優しい言葉をかけることは、目の前にいないけれど真面目に頑張っている人を中傷していることに等しいということになる。
テスラCEOとなり、電気自動車製造工場を、ゼロからつくりなおしているときのことだ。マスクは自分が工場の現場に入って、総力戦を行うことにした。自分の信念を貫き、自分の信念についてきてくれる仲間と、1日24時間、週7日、泊まり込みで現場に身を投じるのだ。マスクに言わせれば「正気の限界ぎりぎりって感じ」だったらしい。
同書によれば、こんな痺れるやりとりもあった。