中国も石破首相を繋ぎ留めようと必死
日本の世論が反トランプ色を強めれば、石破首相はより強気になって、持論である対米自立路線に走る恐れがある。その場合、石破首相を失脚させる戦略もあり得るが、世論が反トランプなら、選ばれる新政権も反トランプになる。石破政権より反米的性格を持った政権交代になる可能性すらあるので、こうした戦略は得策ではない。日本の世論が米国を牽制しているのだ。
こうした図式を大きな目で見れば、日米関係は大きな転換点にあるということがわかる。「日本は米国の言いなりになる」と米側に見切られていた岸田文雄政権までの自民党の首相には、米国追従という選択肢しか考えられなかったのに対して、石破首相は自ら切り拓いた中国との関係改善というカードを見せながら、米中の間でバランスをとりつつ、「ジャパン・ファースト」の自主独立外交路線に少しずつ舵を切ることが可能になったということなのだ。
もちろん、「バランス外交」と言えば聞こえは良いが、一つ間違えば「コウモリ外交」として両国からの信頼を失う可能性もある。
現に、今回の日米共同声明に関して、中国政府は、日本の在中国公使を呼び出して厳重な抗議を行った。
だが、大使ではなく公使というところに、中国側の「配慮」が見て取れる。中国としては、日本に対して極めて融和的政策を打ち出したばかりなのに、石破首相が思いの外トランプ大統領と近づく姿勢を見せていることに対して、「メンツを潰された」と感じたかもしれない。
しかし、だからと言って石破首相を「裏切り者」と切って捨てることはせず、穏当な方法で抗議することで、日中関係改善の流れを変えたくないという意思を表明したように見える。
中国もまた石破首相を繋ぎ留めようと必死なのだ。
米中という超大国から見て非常に重要な地政学的位置にある日本は、実は有利な立場にあるということを認識すべきだ。この地政学的な「利点」を活かして、真の自主独立外交への転換を一歩ずつ着実に進めてもらいたい。
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