米側から見ると石破首相は「今までとは違う」

 1月21日配信の本コラム「石破首相の持論『米国からの自立』を進めるチャンス トランプ氏の“横暴”をかばわず『米国の本性』を知らしめろ」に、私は、「トランプ登場により、世界での米国への信頼は地に堕ちた。……グローバルサウスは、米国寄りからむしろ中国に軸足をずらしつつある。こうしたことは、米国の外交・軍事関係者も認識しているはずだ。トランプ氏のやりたい放題にしていては、米国は、経済だけでなく、外交でも安全保障でも世界での地位を大きく落とし、それがまた米国経済に跳ね返るという悪循環に陥ることを最も懸念するはずだ」と書いた。

 トランプ大統領の政策は、米国を世界から孤立させる方向に進んでいる。アジア諸国では、元々、米中いずれにも与しない外交安全保障政策をとる国がほとんどだが、トランプ大統領の登場で、少なくとも従来よりも米国寄りになる国はないだろう。それとは逆に、米国から離れていく遠心力が強まることは確実だ。

 米側から見ると、石破首相は、明らかにこれまでの自民党の首相とは違う。

 就任早々中国の李強首相、習近平国家主席と立て続けに会談し、それを受けて、中国がビザなし渡航を日数延長の上で再開し、日本が富裕層向け10年間の数次ビザを新設するなど両国の交流が活発化している。中国側からは、石破首相の早期訪中の招請があり、石破首相もこれに応じる姿勢だ。その先には習主席の訪日も視野に入っている。さらに中国側が日本産水産物の輸入解禁に向けたステップを踏み出した。中国軍関係者が訪日し、与党議員の訪中も実現した。

 自民党内右派の批判にもかかわらず、日中関係の改善は驚くほどのスピードで進んでいる。

 石破首相は、ASEAN諸国との連携を強める動きも見せている。

 ASEANのように、米国一辺倒ではなく中国との間でバランスをとる外交姿勢に切り替えようとしているようにも見える。

 米側から見ると、これらは極めて危険な兆候である。

 意外かもしれないが、こうしたことを背景に、実は、日本の世論もまた大きな役割を果たしている。

 日本の世論はトランプ大統領に対して非常に批判的だ。

 今や「トランプ大統領は世界中で最も異常な独裁者の一人だ」という見方が日本国内でも広がっている。そのトランプ大統領が関税などで脅しをかければ、日本の世論はさらに反トランプに傾く可能性が高い。

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大国から見て実は有利な立場にある