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子どもを持つ人にフォーカスすると、意外なことがデータから見えてくる。亀坂教授が、専業主婦の母と共働きの母の幸福度を分析すると、専業主婦の母は末子を産んで3年間ほど高い幸福度を維持する。
「実は日本の結果は特殊です。旧西ドイツ地域では、産後すぐに幸福度が低下します。日本では女性がある程度の所得水準がある男性と結婚する傾向にあるので、そもそも余裕がある人だけが出産しているのではないかと考えられます」(亀坂教授)
幸せな人が結婚、出産している。
幸福の経済学から何が見えるか。亀坂教授は言う。
「日本は『無理ゲー』社会です。まともに働いてもゲームをクリアできません。共働きでも女性が8割以上の家事負担をしている家庭も多いです。女性がキャリアを続けながら家庭も築いて子どもも育てることが無理に近いんです」
幸せのヒントは。
「脱出できる環境を作ることが大事です。いざというときにクリアできる条件を整えておけば生き残れると思います。私も病気がちだった子どもが入院するたびに、仕事を続けられないかもと思いましたが、大学教員ができなくなったら、公認会計士の資格を持っているから会計事務所でパートで働こうと思えたから、生き延びることができたと思います。これは無理ゲーかもと思ったら、他のゲームに切り替えたり、ゲームのやり直しができる社会を築くことが大事です」(亀坂教授)
いざというときに頼れる先を用意したほうがいいことは、データにも表れている。
「内閣府の調査でも、困ったときに頼りになる人が5人以上いる人は将来の不安が少ないことがわかっています。所得が低くても、周りに支えてくれる人たちがいれば幸福度は高まります」(亀坂教授)
佐藤教授は、幸福度の解釈には注意が必要だと話す。
「幸福度は今の日本社会を反映する指標であり、いまの結果が幸せの条件ではありません。今は子どものいない既婚女性の方が、子どものいる既婚女性より幸福度が高いですが、社会が変われば、子どものいる既婚女性のほうが幸福度が高くなると思います」
幸せになるには三つの要素が必要だという。
「お金、健康、豊かな人間関係です。ハーバード大学の研究で、家族や友人と関係を築いていくことが幸福度の向上に効いてくることがわかっています。悩みを相談し、楽しい時間を過ごせますし、新たな情報を知ることもできます。人と会う習慣があれば身なりをきれいにして、健康を大切にする効果があるのではないかと言われています。人とのつながりを維持することが、人生に対する投資になっていきます」(佐藤教授)
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2025年2月17日号より抜粋
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