子どものいる女性のほうが幸福度は低い(写真:iStock / Getty Images Plus)
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 既婚・未婚で幸福度は変わるのか、既婚女性の子どもの有無は生活満足度にどう影響するのか。幸福のヒントを専門家に聞いた。AERA 2025年2月17日号より。

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 結婚すれば幸せか。結婚しているから幸せ、とは言いきれない。もともと幸せな人が結婚していることが、データからうかがえる。

 既婚、未婚、男女別の幸福度を見ると、どの年代でも、既婚者の方が幸福度が高い。最も幸福度が高いのが既婚の女性もしくは男性で、次に未婚女性が続く。ダントツで低いのは未婚男性だ。

「既婚か未婚かで幸福度に大きな格差が生じていると思います。日本の社会全体が、結婚といった形式にこだわっている面があり、特に男性は高学歴、正規雇用でなければ結婚しにくいのです。結婚した場合、日本では家事分担が女性に偏りがちであることも、未婚男性と比較して既婚男性の幸福度を高めていると思います」(青山学院大学の亀坂安紀子教授)

 未婚男性は50代で幸福度が顕著に低下するが、なぜか。

「老後の不安を抱えるからだと考えられます。50代になると、自分の子どもを持てない可能性が高まります。老後に妻に自分の面倒を見てもらうこともできず、子どもに世話をしてもらうこともできません」(亀坂教授)

 子どもを持つことは幸せなイメージがある。だが、既婚女性で最も生活満足度が高いのは、子どものいない女性だ。むしろ子どもの数が多い既婚女性ほど、生活満足度が下がる。なぜ子どもを持つと、満足度が下がるのか。拓殖大学の佐藤一磨教授は言う。

「もちろん、子どもを持つことが不幸せなわけではありません。子どもを産み育てる肉体的精神的な負担が、男性よりも女性にかかる傾向にあります。産後に夫婦関係は悪化するという指摘もあります。教育費の負担も幸福度の低下につながっていると考えられています。子どものいる既婚女性の幸福度は変わりませんが、子どものいない既婚女性の幸福度は上昇しています。結婚したら必ず子どもを持つべきという社会的な価値観が変わったからだと考えます」

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日本は『無理ゲー』社会