「ブルペンでは大注目を集める中、落ち着いた感じで投げていたのには感心した。身体能力の高さはズバ抜けているので、150キロ以上を投げても驚かない。本気で投げるつもりなら投球フォームをしっかり固めてからになるが、大差がついた状況なら任せられるだろう」(在京球団スカウト)

 トライアウトと位置付けての投球を見守った石井一久GMからは、「4球肩」と現時点での不合格を言い渡された。しかし変わったことが好きな同GMの胸中を考えると、この先も目が離せない。

「投手練習は外野守備にもマイナスにならないから並行してやれば良い。だが、まずは野手として任された仕事をこなしてチームの勝利に貢献して欲しい。辰己の活躍次第では上位進出も狙える」(楽天OB)

 昨年は4年連続のゴールデングラブ賞に加え、158安打で最多安打を記録。ベストナインも獲得するなど攻守でチームを牽引した。周囲がさらなる上積みを期待するのも当然だ。また、将来的なメジャー挑戦を語るなど、プロ野球選手として脂がのっている時期で、来年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では代表入りを期待する声も少なくない。

 そして、二刀流の話題などが一人歩きするが「勝ちたい」思いは誰よりも強い。

「(辰己は)お調子ものだけど野球に対しては本当に真面目。昨年はチームのネガティブな話題が多かったので、必要以上にパフォーマンスをした部分もあった。今年は落ち着いてシーズンを迎えられるので、もっと飛躍できるはず」(楽天関係者)

 辰己は「いつ投げるかわからないので毎試合、見に来てください」とファンへメッセージも送っている。「今季の楽天からは目が離せなくなるかもしれない」と思わせるだけで術中にハマってしまっているのかもしれない。本当に二刀流は実現するのか、シーズン中の行方を見守りたい。

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