増田康宏八段=2024年12月17日、東京都渋谷区・将棋会館
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年2月17日号より。

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 藤井聡太棋王(22)に増田康宏八段(27)が挑戦する、第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負が開幕した。第1局は2月2日、高知市でおこなわれ、127手で藤井棋王が勝利。防衛、七冠堅持に向けて好スタートを切った。

 増田は本局に至るまで、藤井に1勝6敗と大きく負け越していた。ただし、やや不利な後手番が続いていたこともある。

 増田は前夜祭で屈託なく、次のように語っていた。

「明日はどうしても、先手番が来ることを願っています」

 対局に先立つ振り駒で、増田はまたもや後手となった。内心、残念だっただろう。しかしそんな素振りはみじんも見せず、藤井十八番の先手角換わりを堂々と受けて立った。途中は桂馬を1枚得した増田が、ややペースをにぎったようにも見えた。

「中盤戦、少しずつ苦しい形勢が続いているのかなという感じがしていました」(藤井)

 本局は長く続いた中盤の押し引きが、実に見応えがあった。藤井は形勢を離されないよう、じっとついていく。そして藤井が自陣の飛車を一つ寄せた手が、地味ながら増田のあせりを呼んだ。

「そこでちょっと差が広がらないことに動揺してしまって。そのあとミスが続いてしまったかなと思います」(増田)

 終盤は次第に藤井優勢に。そして結果はまたしても、藤井の勝ちとなった。

「中盤ぐらいまではかなり戦えてるのかなと思ったんですけど。終盤は差がついてしまったので。ちょっとやはり、藤井棋王との差を感じました」(増田)

 タイトル戦初登場の大器・増田は、ここから立て直せるか。それとも王者・藤井が一気に突き進むのか。第2局は2月22日におこなわれる。

 将棋界の歳時記では、棋王戦が佳境を迎える頃、年度もいよいよ最終盤となる。(ライター・松本博文)

AERA 2025年2月17日号

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