つねみ・ようへい/千葉商科大学国際教養学部准教授。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中
この記事の写真をすべて見る

 コロナ禍以降、普及したリモートワークだが、出社に方針転換する企業も少なくない。出社かリモートか、働き方が二択化しつつあるが、ワークスタイルに正解はあるのか。働き方評論家の常見陽平さんに聞いた。AERA 2025年2月10日号より。

【アンケート結果】リモートワークについてどう思いますか?

*  *  *

 出社かリモートか。さまざまな議論がある中で、日本は実は良い模索をしているのではないでしょうか。

 それは単純に「出社が良い」や「リモートが良い」といった二項対立ではなく、「この仕事はリモートで対応すべきか」あるいは「対面のほうが効率的なのか」ということを慎重に考え、適切な方法を探っているからです。

 働き方には、出社とリモートという二択に留まらず、職種や企業の強み、さらにはその企業独自のワークスタイルが関係してきます。

 例えば、オフィス機器を提案する企業の場合、「自分たちが模範を示さなくてはならない」という思いから、出社を促進する考えが自然と生まれることもあるでしょう。ですが、ここで重要なのは、「出社したくなるオフィス」をいかに作るかという視点です。

 オフィスは、そこにいるだけで情報共有の場になります。もちろん、リモートでもグループチャットやオンライン会議で情報共有は可能です。しかし、物理的に顔を合わせるオフィスには独自の価値があります。

 例えば、すれ違いざまの会話がきっかけで、メールでは聞きづらいことを気軽に尋ねられる場面も生まれます。最近では、ガラス張りの会議室や、ホテルのロビーのような雰囲気のオープンスペースを取り入れた企業も増えています。オフィスのフリースペースで会議を行うことによって、社内の別の部署や役員たちに自らの進捗や働きを共有することもできます。周囲に人がいることで感じられる心理的安心感も、オフィスならではの利点と言えます。

 オフィスの変化で興味深いのは、コロナ禍を経て生まれた「リモート会議専用の会議室」です。そこには複数人が集まってリモート会議を行うために、大画面ディスプレーやオンライン会議用のシステムが設置されています。

「リモート会議であれば、それぞれ自宅から参加すれば良いのでは?」と思うでしょう。しかし、こうした会議室でリアルに話し合う人もいることで、「空気感」や「思いの共有」ができ、意思決定を早めることがあるのです。「膝を突き合わせたコミュニケーション」の重要性を再認識させられます。

 リモートの利点と出社の利点。それぞれを踏まえた上で、今の働き方を一度見直すことが大切です。既成の概念を疑い、状況に応じて柔軟に判断し、働き方を適切に選ぶ姿勢が企業には求められています。最終的には、社員一人ひとりが自分に合ったスタイルを選べることが理想ではないでしょうか。

(構成/編集者、ライター・千駄木雄大)

AERA 2025年2月10日号

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼