「電話切られずに信じてもらえました!」
いきなり電話して大丈夫なのかと、話を聞いてみると「だいたいみなさん信用してくださらないので、最初はちょっと慎重にアプローチするんです。長年の経験から、まずは『新聞記事を読みまして〜」というところから切り出すと信じてくださる方が多いということがわかりまして!」と、ノウハウを語ってくれます。実は受賞者には副賞として賞金100万円、そして腕時計が贈られるのですが(さすがシチズン!)詐欺と思われないためにも、そのことにはまずもって触れないのがコツだそうです。事務局メンバーのみなさんは緊張しつつ電話連絡しているけれど、「連絡が取れました! 電話切られずに信じてもらえました!」と、かなり楽しそう(笑)。
不思議なものでこの賞を運営しているシチズン事務局のみなさんも、とても温かくアットホームな雰囲気。仕事はきっちりできるけれど事務的なところが皆無と言ってもいいほど、ない。つまり心が通っているのが手に取るようにわかる安心感がある、この賞の性格にぴったりの方たち。心からこの賞を誇りに思って運営しているのがよくわかります。
そんなこんなで、今年も3組の方たちを選出し、無事表彰式が行われました。
まずは「一般社団法人 日本認知症本人ワーキンググループ」のみなさん。認知症になってからも希望と尊厳を持って暮らせる社会の実現を掲げ、認知症の本人自身が主体的に活動する団体です。代表理事の藤田和子さんは63歳。45歳の時に若年性アルツハイマーと診断されますが、それから18年、工夫をしながら生活することできちんと社会活動も実現し弾ける笑顔で全国を飛び回っておられます。いずれいろいろなことが困難になる日がくることは覚悟しつつ、仲間たちと繋がり、家族たちと繋がり、地域と繋がり、希望を持って認知症と共に生きる日々を発信していらっしゃいます。
認知症になったら人生が終わりではないことを認知症本人たちが伝え続けています。
そして2組目は、愛知県で活動する小沢ちえさん、ほのさんの親子。不登校の娘と向き合った母と当事者だった娘それぞれの経験を活かし、不登校に悩む親子の相談に応じています。ほのさんは中学生の時に不登校になりますが「イラストレーターになりたい」という夢を見つけ専門学校に進み、それを実現。母のちえさんは心理カウンセラーの資格などを取り、母娘でぶつかり合いながら悩みながら進んできた二人だからこそのカウンセリングをしています。月に1回は一人親家庭向けの無料相談を受けつつ、公式LINEで「じぶんらしさ商店」を開設。母娘コンビで相談に応じる。大人には話せないことを、金髪でイケてるお姉さんのほのさんには「誰にも言わないでね」と語り始める子も。当事者である方たちによるカウンセリング、これからもっともっと広がってほしい。あるようでなかったスタイルだと思います。