水草の間に赤い体をチラチラ覗かせて泳ぐ金魚。その姿は見ているこちらもなんとも癒されます。近年、金魚を鑑賞した時の心拍変動の変化からリラックス効果があることも明らかになってきているとか。



 日本人と金魚の歴史は古く、室町時代に中国から日本に渡って来てから500年程と言われています。江戸時代初期には貴重品として一部の上流家庭でしか楽しむことができませんでしたが江戸時代後期になると一般の町民でも手に入れられるようになり、庶民の間に"金魚ブーム"が到来しました。浮世絵の中でも軒先や部屋の中に金魚用の鉢を置き、金魚を愛でる江戸の人びとが描かれているのを見たことのある人もいるのではないでしょうか。



 実は金魚の祖先は「ジイ」と呼ばれる鉄色をした中国ブナ。このフナが突然変異によって赤い個体が生まれ、それが今の金魚に繋がっているということが近年のDNA解析によって明らかになっています。はじめは和金の一種類だけであった金魚も現在では飛び出した目がユニークな出目金や、優雅に広がる尻尾が特徴の土佐金など20種を越える種類が存在しています。



  本書『原色金魚図鑑』では、日本で手に入れられる主な品種を1「和金型」、2「蘭ちゅう型」、3「オランダ獅子型」、4「琉金型」の4つの分類に分け、飼育のポイントや魅力、楽しみ方が写真付きで紹介されています。注目すべきは、国産の金魚の中では一番新しい品種である"桜錦"。おでこがぼこぼことして丸っこい身体が特徴の蘭ちゅう型の金魚なのですが、うろこの色がパステルカラーの桜色をしており、まるで桜の花びらのようなのでこの名前が付いたとのこと。



  本書では金魚の遺伝のメカニズムや、うろこの色の出方についても詳しく言及。



「驚くべきことに、生まれたての稚魚は透明です。その後、徐々に色素が現れ、まず黒くなり(透明鱗性の個体は透明なまま)、少しずつフナのような鉄色に、次に青仔と呼ぶ緑がかった色、黒仔と呼ぶ黒い色を経て赤色という順で金魚らしい色に変わっていきます」(本書より)



  こういう経緯でうろこに色がついていくため、黒い模様がある小さい金魚を買ってきたのに、しばらく飼っていたら全身赤色になった...ということはよくあることだそう。



  成長した結果、「最初に思っていた色と違う!」と思われる方もいるかも。しかし、本書では「あなたのそのかわいい金魚たちがどう変化していくのかを楽しみに夢を馳せるのが金魚飼育の醍醐味なのです」と解説。自分が愛らしいと思う金魚を見つけてかわいがってみるということが豊かな金魚ライフの一歩なのかもしれません。



  ちなみに、水槽の掃除などで金魚を別の容器に移すとき、網を使う方も多いと思いますが手でそっと、水ごと金魚をすくって移動させるのが一番やさしい方法だそう。気になる方は、自分の生活に金魚を取り入れてはいかがでしょうか? もちろん生き物なので、最後まで責任と愛情を持って飼ってくださいね。