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物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2025年2月10日号より。
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いったい、どこのどいつなんだ。「日本にとっては円安の方がいい」と言っていたのは……。
多くの人が実感しているように物価上昇はやみそうにない。諸悪の根源は円安なのだが、一方ではかつて、「日本の輸出企業が儲かるから、円安が望ましい」という論理が経済紙では幅を利かせていたが、年に1回の“答え合わせ”の時期がやってきた。
財務省が1月23日に2024年の貿易統計速報を発表した。それによると、24年の輸出額は107兆913億円だったそうだ。経済ニュースのヘッドラインには「輸出は過去最高」と書かれている。この数字だけ見れば「ちゃんと日本製品が売れてるんだ」と安心しかねないが、この1年間でドル円相場はさらに円安が進んだ。23年は1ドルあたり140.56円だったのが、24年には151.58円と、10円以上も円の価値が下落した。7.8%ほど目減りしたことになる。だが、輸出総額の伸びは6.2%増にとどまる。円ベースで見れば金額は過去最高でも、ドル換算するとむしろ減っていて、実際の輸出量も落ちているのだ。
ヘッドラインには「輸出は過去最高」と書かれていても、内情は全く違う。1年で10円以上進んだ円安による物価高で消費者が困っているにもかかわらず、実は輸出品が売れていませんでした、とはなかなか書きづらいのだろう。こうした経済ニュースは、企業側の論理を取り上げることが多く、これまで円安が正義かのように伝えてきた。