苦手な男と寝てみると意外と可愛げや隠れた特技などを発見できることがあるように、女同士でもこの敵とむやみやたらと近づく戦法では、苦手だった女のかわいい側面を発見できるという利点もあります。自分としても苦手な人が近くにいるよりは、割と面白いやつが近くにいる状況のほうがストレスが少ないので、嫌いじゃなくなるに越したことはありません。金原ひとみさんの『ナチュラルボーンチキン』という小説に、ルーティンを愛する事務職女が、パリピ編集者と謎の友情をはぐくむ話があるので、読んでみたら面白いかもしれません。

サバサバな青木さんに“乙女”を押し付ける

 もう一つ、私が割と自分の精神が元気な時にやる遊びで、若干苦手な人に、ものすごく悪意のない様子で、自分の苦手なキャラではなく苦手じゃないキャラを押し付けてみるというものがあります。

 たとえば自称サバサバ系みたいな仕切り屋女子のことが気に入らないとします。で、その人とひょんなことからランチをしたりお茶をしたりする機会があれば、彼女の話の端緒を使って、「え、青木さんって普段サバサバしてるのに恋バナになるとめっちゃ乙女だし女らしくて最高なんですけど! もともとかっこいいと思ってたけどさらに百倍くらい憧れちゃいました! もー大好き。そういうところ世界中に知ってほしいわー、みんな青木さんのファンになっちゃうんですけど。もはや青木さんになりたい」と、勝手なキャラを百パーセント善意プラス思いっきり下から押し付けるわけです。

 人は自分でアピールしたいキャラ以外のものを貼り付けられると普通は嫌ですが、ここまで下から、しかも褒められて崇められて押し付けられたものには、「そ、そんなに似合う? このフリフリの服……」という感じで戸惑いながらも試着してみるものです。そうやって苦手な人の苦手な側面を多少工具で削って改良しつつ、頑張って職場というジャングルを生き延びてください。

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