現在主流の布製タイヤチェーン=中発販売提供

厚みが薄いため、装着できる車種も多い。たとえば現行のトヨタ・プリウスやクラウンの場合、タイヤとボディー(タイヤハウス)とのすき間が狭く、従来のタイヤチェーンを装着するには制約がある。その点、布製チェーンであれば問題なく装着できる。

毛羽立ちがスリップ防ぐ

 肝心な雪道での走行性能はどうだろうか。

 従来のタイヤチェーンは、金属のくさりやスパイクが雪面に食い込んでグリップ力を発揮するが、布製チェーンは「毛細管現象」という全く別の仕組みで制動力を発揮する。毛細管現象は、細い管の中で液体が吸い上げられる現象で、布の繊維のすき間でも起こる。

 布製チェーンは特殊な織り方をしたポリエステルの布地で作られている。タイヤに装着して少し車を走らせると、表面がこすれて毛羽立ちが生じてくる。一見すると、布地が傷んでいるようにも見えるが、「これが最もいい状態です」と服部さんは言う。

 雪道で車がスリップする原因はタイヤと雪面の間に生じる薄い水の膜だ。本来、雪とタイヤの間には強い摩擦力が生じる。ところが、車が雪の上を走ると、その圧力で表面が溶け、水(液体)で覆われる。摩擦力が極端に低下し、スリップ現象が起きる。布製チェーンは繊維が水を吸い上げてタイヤと雪を密着させるため、滑らないのだ。

左から樹脂製、金属製、布製のタイヤチェーン=米倉昭仁撮影

乗り心地は普段と変わらず

 布製チェーンが最も効果を発揮するのは、雪が固まった圧雪路だという。深雪にタイヤがはまり、大渋滞が発生するが、深雪から脱出する際にも布製チェーンは有効だという。国交省・北陸地方整備局が実施した脱出試験では、布製チェーン(AutoSock)が中型トラックで最もよい成績を収めた。

 国交省が定める「チェーン規制」区間では、スタッドレスタイヤを装着した車であっても通行できないが、布製チェーンをつければ、高速道路も走ることができる(制限速度は50キロ)。

 従来製品は、樹脂製チェーンでも砂利道を走るときのような振動を生じるが、布製の乗り心地は普段走るのとほとんど変わらない。

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耐久性も十分だが注意点は