朝日杯将棋オープン戦、準々決勝の対局に臨む服部慎一郎六段。手前は藤井聡太名人・竜王=2025年1月19日、名古屋市港区
この記事の写真をすべて見る

 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年2月3日号より。

【貴重写真】和服じゃない!スマホ片手にデニム姿の藤井聡太さん

*  *  *

 1月19日、愛知県名古屋市でおこなわれた朝日杯将棋オープン戦。服部慎一郎六段(25)は1回戦で丸山忠久九段(54)、2回戦で藤井聡太七冠(22)を下し、ベスト4進出を果たした。

「自分でもびっくりしてます」

 藤井との公式戦初手合いを制した服部は局後、そう口にしていた。

 タイトル八冠再独占の可能性もある藤井は、朝日杯では過去に優勝4回の実績を持つ。一方の服部は順位戦では中位クラスのB級2組に所属し、朝日杯は今回が初の本戦出場。服部の勝利を「大金星」と表現する報道もあったが、両者の格の違いだけを見れば、大げさとも言えないのかもしれない。しかし「大番狂わせ」と感じた関係者は、ほとんどいなかったのではないか。それほどまでに、すでに服部の実力は明らかだ。

 服部は藤井戦勝利の時点で、今年度勝率を0.892(33勝4敗)とした。これまでの最高勝率は1967年度、中原誠五段(当時。現十六世名人)がマークした0.855(47勝8敗)。史上最高の実績を誇る羽生善治九段(54)や、現在の藤井でも、いまだに抜けていない不滅の記録だ。そうした中で、服部はその勝率を上回るペースで勝ち続けている。最大の難関である藤井を破った現在、服部の新記録達成も、現実味を帯びてきた。

「そういう位置にいるのはすごく、うれしいはうれしいんですけど。やっぱりでもプレッシャーもかかりますし。あまり意識しないようにしなきゃいけないなと」(服部)

 服部は明るい性格で、サービス精神も旺盛な若者だ。ニックネームは「忍者」で、求められればそのポーズもしてみせる。2024年には冨田誠也五段(28)と「もぐら兄弟」というコンビを組んでM-1グランプリの予選にも出場した。この先、さらに注目される棋士になるのは間違いない。(ライター・松本博文)

AERA 2025年2月3日号

[AERA最新号はこちら]