海外で人気の日本文化というと、マンガ、アニメ、ゲームなどに目がいきがちですが、小説やエッセイ、評論といった日本の文学に対する評価にも高いものがあります。英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、オランダ語、ロシア語など、20以上もの異なる言語に翻訳され、海外では日本文学の代名詞ともなっている『源氏物語』をはじめ、古典文学から近現代小説にいたるまで、世界で評価されている日本の名著の数々。



 本書『世界に愛され、評価される! 「日本の名著」』では、そうした海外で人気の27作品に注目。あらすじを説明した上で、どのように海外で受け入れられているのかを解説していきます。



 たとえば、小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが取り組んだ、日本の昔話や民話を書き直す"再話"のうち、とくに評判となったのは『怪談』。耳なし芳一の物語、むじな、雪女、ろくろ首など17編が収録されている『怪談』は、日本各地に伝わる幽霊や妖怪などの伝説を八雲独自の解釈を交えて文学の域にまで高めた作品集ですが、その読者のなかにはチャップリンやアインシュタインも。



 チャプリンは『怪談』をきっかけに大の親日家に、アインシュタインも来日の目的を尋ねられた際、ハーンの本で読んだ美しい日本を自分の目で見るためと答えるなど、『怪談』の描く世界に魅了されていたことが伝わります。「八雲の作品は、英語圏において日本の印象を大きく変え、新たな関心をかきたてた」(本書より)のだといいます。



 さらに、佐賀鍋島藩士・山本常朝の談話を若侍の田代陣基が書きとめ、11巻にまとめた『葉隠』。"武士道といふは、死ぬ事と見付たり"という一文からはじまり、第1・2巻は常朝自らの教訓、武士としての心構えをまとめたもの、第3〜5巻は佐賀藩主の言行、第6〜9巻は佐賀藩士の言行と史跡伝説、第10巻は他藩の武士の言行その他、第11巻は補足という構成からなる『葉隠』は、1979年にウィリアム・スコット・ウィルソンによって初の英語版が出版。



 2009年に急死したマイケル・ジャクソンの愛読書を収めた書棚には、この『葉隠』が残されていたそうです。



 また、映画の影響により文学作品に注目が集まるケースも。1950年に公開された黒澤明監督の映画『羅生門』は、同じく芥川龍之介の別の短編『薮の中』をベースに、『羅生門』を一部取り込んだものでしたが、この映画は1951年にヴェネチア国際映画祭金獅子賞とアカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞。映画の影響が活字の世界にも及び、40ヶ国以上で1000点に迫る翻訳版が出ているそうです。



 外国人が愛読する日本の名著の数々。紹介される作品のなかに未読のものがあるならば、この機会に読んでみてはいかがでしょうか。