トランプ大統領(写真:AP/アフロ)
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 トランプ氏が米大統領に就任した。これからの国際情勢はどうなるのか。ジャーナリスト・思想史家の会田弘継さんと米国政治に詳しい同志社大学准教授の三牧聖子さんが語りあった。AERA 2025年1月27日号より。

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三牧:トランプ政権の人事は、「反・専門知」。厚生長官に指名されたロバート・ケネディ・Jr.はワクチン懐疑論者として知られ、懸念を抱くノーベル賞受賞者が連名で、厚生長官にしないよう訴える書簡を公開しました。国家情報長官に指名されたトゥルシー・ギャバードは、シリアのアサド政権による自国民への化学兵器使用に懐疑を呈したり、ロシアによるウクライナ侵攻に理解を示すなど、情報機関を統括し、国家や国民の安全を担う存在として、これほど不適切な人選はないとの声があがっている。

 ただ、今の米国では、国際金融資本や軍産複合体、官僚組織などから成る「ディープ・ステート(闇の政府)」に政府がのっとられていると考える人が3割から4割に及び、政府への信頼は10%台です。経験も知識もなく、官僚機構に混乱をもたらしうる人事は、だからこそ国民にうけている面がある。

会田:重要な指摘です。米国は歴史的に、行政府が巨大な権力を持つことへの拒否感、嫌悪感が強い。今回の閣僚人事も、大きくなりすぎた行政府国家をいったん脱構築して、立法府を核にした政治へと作り直そう、そんな大きな改革の過渡期と見るべきだと思います。その過程で「変なこと」が起きないとは限らない。でも「変な奴らがバカなことをやってる」などとあざ笑うだけで、政権内でどんな思想がどう動いているかを注視するのを怠ると、トランプ政治の意図を見誤ると思います。

ジャーナリスト・思想史家:会田弘継さん(73)あいだ・ひろつぐ/共同通信ワシントン支局長などを歴任。著書に『それでもなぜ、トランプは支持されるのか アメリカ地殻変動の思想史』など(写真:横関一浩)
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日本は米国とどう向き合っていけばいいか