作家・鈴木涼美さんの連載「涼美ネエサンの(特に役に立たない)オンナのお悩み道場」。本日お越しいただいた、悩めるオンナは……。
Q. 【vol.32】実家がない寂しさを抱えるワタシ(30代女性/ハンドルネーム「T」)
実家のない人のお正月の過ごし方についてです。父と母は離婚し、母も闘病の末他界し、私も結婚して何年か過ぎました。周りの同年代の子は、実家に帰省する子が多く、私も旦那さんの実家で、親戚同士で過ごす日があります。旦那さんの実家は、家族仲良く、父母がごはんを出してくれて、片づけもしてくれるという平和な環境です。
対して、自分でやらなければ、あるいは外食、外泊などお金を払わなければ、ごはんなんて出てこない日々を過ごしてきた私にとって、恵まれた実家があることがうらやましいという気持ちが募り、もし父母が離婚しなければ、母が生きていれば、と思わずにはいられなくなってしまいます。どうしようもないことだと思うし、もし母が生きていたとして、そのようになったかというとわからないのですが、行き場のない気持ちを、どのように持っていけばよいでしょうか?
A. 寂しいという名の自由を極上のものに
母が他界してしばらくすると、私も正月に帰る家というものを失ったことに気が付きました。父と不仲なわけではないけれど、私の育った家族の要となっていた母がいなくなったことで、他のメンバーは自ずとそれぞれの生活へと散らばって行ったからです。建物としての実家は今もありますが、そこには父と新しい家族がいるので、実質もう私の実家と呼んでいいのかはわかりません。私の部屋はもうないし、私のものもかなり片づけられています。