
アポダイゼーションフィルター搭載レンズ
アポダイゼーション(APD)フィルターを内蔵したレンズは美しいボケ味を追求したものとして知られる。APDは、中心部と周辺部の透過率をグラデーションによって変化させたもので、中心部は透過率が高く、周辺部では低くなっている。周辺部を通る光は弱められることになり、ボケる部分の輪郭が柔らかくなだらかになり美しいボケ味で再現されることが特徴だ。
このエレメントを内蔵したレンズはミノルタが先陣を切った。現行の純正レンズとしては、ソニーα(Aマウント)用の135㎜ F2.8[T4.5]STFと、富士フイルムのXシリーズ用としてXF56㎜F1.2R APDの2本のみ。今回紹介するのは中国製の一眼レフ用の交換レンズでレンズ名にある英語の「Bokeh」とは文字どおり「ボケ」のことだ。
ユニークなのは絞りが二重構造なこと。T値(撮像面に届く実際の明るさ)表示でボケ味や光量調整をする14枚羽根の円形絞りと、通常の被写界深度やF値を調整する8枚羽根の2種を備える。F値はF2~22、T値はアポダイゼーションエレメントの要素を加味した値でT3.2~8の範囲で設定できる。ボケ味はF値を開放にして、T値の絞りで調整することになる。

デザイン
金属鏡筒のしっかりとしたつくり込み、フォーカスリングの仕上げなど、モノとしても一級品のレンズである。MFレンズの先達であるコシナのツァイスやフォクトレンダー製品の影響を受けていると思われる
使用感・操作感
MFレンズ、絞りも手動のフルマニュアル。EOS 5DMarkⅢでは実絞りAEで使用できた。スクリーン上のボケの大きさが実際と異なるので注意
描写性
光学性能は秀逸。T値は3.2だから、被写界深度はやや深い。画像の均質性が高いことも特徴。合焦点とボケ味のバランスがとれている。開放値では若干の周辺光量低下があるが、自然な写りなので問題はないだろう
◆赤城耕一
* * *
●焦点距離・F値:105mm・F2.0●レンズ構成:8群11枚●最短撮影距離:0.9m●最大撮影倍率(35mm判換算):0.16倍●画角:23.1°●フィルター径:φ67mm●マウント:ニコンF、キヤノンEF、ソニーFE、ソニーA、ペンタックスK●大きさ・重さ:φ76×98.9mm・746g●価格:オープン実売11万700円