田中道子さん(撮影/和仁貢介)

私の信念は「社会の役に立ちたい」

――13年にミス・ワールド日本代表として世界大会に出場しましたが、初めての世界の舞台での仕事はいかがでしたか。

 審査のために1カ月間、約130カ国・地域のミスと共同生活をするんですが、そこで大きく価値観が変わりました。

 他国のミスは「うちの国はずっと内戦してるから、できればずっとここにいたい。帰ったら命も危ないし、何が起こるかわからない」と言っていて、「日本って平和で、私はなんて甘やかされて育ってきたんだろう」と大きなショックを受けました。

 ミス・ワールドには、「いかに自分が世界に貢献できるか」という理念のもとミスたちが集まっているので、モデルだけでなく教師や医者、料理人などいろんな職業の方がいました。みんな確固たる目的を持って生きている中、「あなたは何になりたいの」と言われてすぐに答えが出てこないのがすごく恥ずかしかったです。

 それでかなり自問自答して、私の信念は大学3年のときに強く思った「社会の役に立ちたい」ということだと思い出したんです。それでミス・ワールドから帰って、事務所に「1級建築士の資格を取りたいので実務経験を積ませてください」と言いました。最初は「何言ってんの」と一蹴されました(笑)。そのときは、芸能界でまだ何も成し遂げていないのに、欲張っているというか、意識だけは高い状態でしたね。

――16年に俳優に転身されましたが、モデルとの違いを感じるなど苦労はありましたか。

 俳優として活動を始めたのは26歳からでした。他の俳優の方が10代から監督や脚本家、共演者の方と知り合いなのに、私はまず全員が「はじめまして」。しかも初めて出演させていただいたのが「ドクターX」の第4シーズンだったんです。あこがれの現場でしたが、シリーズものですでにみんなの関係性ができあがっていた中だったので、すごく孤独でした。

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初めてのドラマ撮影で感じた「壁」