物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2025年1月20日号より。
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正月の二日だというのに、都心へ向かう電車で小学生くらいの子どもが塾のテキストを手にしていた。おそらく中学受験に向けての勉強だろう。年明け早々から試験が迫っているのだろうか、親子ともども必死の形相だ。
思えば30年以上も昔、筆者自身も「常在戦場」と書かれた黄色いハチマキを巻いて受験に挑んだことを思い出す。
先日、当時通っていた地方の塾の経営者から話を聞く機会があった。押し寄せる少子化の波の影響で、塾の生き残りは厳しいそうだ。
しかしながら、首都圏においては、私立・国立中学を受験する子どもの割合(受験率)は伸びているそうで、首都圏模試センターの推計によると、10年前は14.1%だった受験率は2024年には18.1%と、過去最高になっているという。
関西の大手塾も首都圏に進出し、熾烈なシェア争いがはじまるようだ。子どもが減れば競争は落ち着くかと思いきや、むしろ受験熱は過熱の一途をたどっている。
実際、塾などへの支出を示すデータは過去10年では上昇傾向にある。しかしながら、21年以降は別の傾向が見える。顕著な格差の広がりだ。
文部科学省「子供の学習費調査」(23年度)によれば、公立小学生の学習塾などの費用(学校外活動費)は前回調査(21年度)の24.8万円から21.6万円へと3.2万円減少した。一方で、私立小学生は66.1万円から72.0万円に増加し、5.9万円も上乗せされているという。少子化によって「一人当たりの教育投資」が増えやすいといわれるが、こうした数字からは、格差が開いていることが見てとれる。
つまり、家庭の経済力があるほど、学校教育だけでなく学校外教育にも投入するお金も増えていき、結果として子どもの学力や受験チャンスにさらなる差が出てくる構図だ。こうした経済格差がそのまま教育格差につながり、次の世代へ連鎖している。