30代を迎えてもプレーは衰えるどころか、研ぎ澄まされていくばかり。日本バスケ界の顔は気負いなく、一歩ずつキャリアを積み上げていく。AERA 2025年1月20日号より。
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Bリーグで日本人初の1億円プレーヤー。オールスターへの選出は9大会連続9回(2021、22年はコロナ禍で開催せず)。シーズンMVP1度、リーグのベストファイブには8季連続で選出中と、比類なき経歴を誇るレジェンド。
富樫勇樹は名実ともにBリーグの顔だ。日本バスケ界を背負う重圧はいかばかりか。そんな予想に反して、撮影スタジオにラフな装いで颯爽と現れた富樫は、柔和で軽やかだった。コート上でのトレードマークでもある整髪料でビシッと固めたヘアスタイルではなく、さらさらの髪をなびかせ、さわやかにあいさつを交わす普通の青年だ。
「Bリーグの開幕時には、自分がリーグの顔になる、なんて想像もしていなかった。日本に戻ってきた理由の一つは東京五輪への出場。国内リーグで一番のガードになることができれば代表にも呼んでもらえる。そんな思いでここまで続けてきました」
170センチに満たない身長で、大男たちの下をかいくぐり、ここぞの場面で勝負を決するシュートを沈めてみせる。日本代表として東京、パリの両五輪、一昨年のW杯など、数々の国際舞台を踏んできた。昨年11月までは代表の主将も務めた。
かつてNBA入りにも挑戦し、世界を肌で知る富樫も31歳。若い世代も台頭するなか、次のロサンゼルス五輪は視野に入っているか。それとなく聞くと、「やっぱりあまり想像していないですね」とはぐらかすように笑った。
飄々として、気負いもなく自然体。地に足を着け、目の前の試合を一歩ずつ。そうすれば未来は勝手についてくる。そう信じている。(編集部・秦正理)
※AERA 2025年1月20日号