注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年1月20日号より。
【貴重写真】和服じゃない!スマホ片手にデニム姿の藤井聡太さん
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これから詰将棋の魅力に触れたいという方に、定番の名著をご紹介したい。
入門書のロングセラーとして名高いのは浦野真彦八段『1手詰ハンドブック』(マイナビ出版)。真に初心者に寄り添った、優しい心遣いがうれしい。ここで基本的な詰み筋を学んだあとは、3手詰、5手詰、7手詰とステップアップしていただきたい。
風みどり責任編集『Limit 7 簡単明瞭な詰将棋アンソロジー』(つみき書店)はシンプルな形の名作が数多く収録されている。数枚のなにげない駒の配置から、驚くほどに洗練された、奥深い手順を鑑賞できる。
「詰将棋パラダイス」(略称:詰パラ)は70年以上の歴史を誇る専門月刊誌。2025年1月時点で通巻826号を数える。作家にとってはまさに楽園とも言える場所で、ここに数多くの歴史的傑作が掲載されてきた。多くの棋士、女流棋士、奨励会員、アマ強豪たちも、詰パラの難問を解いて棋力上達に励んでいる。藤井聡太七冠もまた、幼い頃から詰パラを愛読してきた、楽園の住人の一人である。
「観る将棋ファン」の方にとっても必読と言えるのは若島正著『盤上のパラダイス』(河出文庫)だろう。詰パラ創刊者の鶴田諸兄(つるたもろえ)をはじめ、詰将棋を愛する有名無名、多くの人々の人間模様をつづった、面白くて、やがて切ない、感動の物語だ。
角建逸著『詰将棋探検隊』(毎日コミュニケーションズ、1995年刊)は古今の代表的な名作を幅広く、かつわかりやすく紹介している。現在では入手困難だが、機会があればぜひご一読いただきたい。著者の角さんは「将棋世界」誌の元編集長で、詰将棋作家としても高名だった。筆者もまた、大変お世話になった。最近訃報を聞き、信じられない思いがする。謹んで御冥福をお祈りしたい。(ライター・松本博文)
※AERA 2025年1月20日号