2人の保育園児を育てるジャマンさん。手にしているのは「ハラル認証」団体による適合証明書=保育園「LIFE SCHOOL桐ケ丘こどものもり」、米倉昭仁撮影

ハラルマークのついた鶏肉

「特別にと畜された『ハラルマーク』のついた鶏肉を使っていますが、値段は豚肉と変わりません。むしろ、安いときもある。『ハラルしょうゆ』は通常の製品の倍くらいしますが、少量しか使わないので、費用にはほとんど影響しません」(同)

 ムスリムの園児が使う食器は分けられ、一目でわかるように絵柄がついている。鶏肉を保管する冷凍庫や食洗器も専用のものを用意する。「ハラル認証」団体のチェックも受ける。

 ある程度の設備投資は必要だが、十分対応できるという。「外国人の子ども受け入れ」の補助金として、ムスリムの園児1人につき毎月9000円が都から支払われていることも大きい。

学校で進むハラル対応

 世界の人口の4分の1はムスリムだ。現在、日本にも20万人以上のムスリムが住むと推計されている。世界最大のイスラム教国はインドネシアだ。在留インドネシア人は2013年末に2万7214人だったが、人手不足を背景に23年末は14万9101人と、大幅に増加した。

 日本で暮らすムスリムの増加にともない、子どもたちの食への対応も進みつつある。

 17年、総務省がムスリムの住民の多い東海6県の20市にムスリム児童・生徒の給食について調査したところ、「弁当の持参を認めている」は14市、「給食から豚肉など、食べられないものを除去(ハラル食)」は8市、「保護者に原材料の情報を提供」は3市だった(いずれも複数回答)。また、調査した15大学のうち、金沢大学や名古屋経済大学など8割の大学がムスリムの学生にハラル食の配慮をしていることがわかった。総務省は「調査結果を今後の取り組みの参考にしてほしい」という。

「体験給食」がなぜ炎上?

 いっぽうで、ムスリム食への「理解」については課題が残る。

 昨年9月、茨城県のとある町が小中学校の児童・生徒にハラル食の献立を提供したところ、「学校は特定の宗教のための活動をしてはならない」「日本の子どもたちを巻き込むな」と、非難が殺到した。

 ハラル食を出した理由を、町の学校給食センターの担当者は、こう説明する。

「ムスリムの子どもたちは給食の時間、弁当を食べているんです。年に1回くらいみんなで同じ給食を楽しく食べましょう、という趣旨でした」

 これまで同センターは、さまざまな郷土食や世界各地の料理を食べてもらう「体験給食」に取り組んできた。ハラル食はその一環でもあった。

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