「トヨタがEV新戦略 26年までに10モデル投入、年150万台販売」
4月7日朝日新聞デジタルの見出しだ。夢のある話に聞こえるが、事情は全く異なる。
自動車全体の世界販売では、トヨタグループ(日野自動車とダイハツ工業を含む)は22年に1048万台で2位のフォルクスワーゲングループの826万台に大差をつけた。シェアも13%を誇る。しかし、電気自動車(EV)販売は、わずか2.4万台、シェア0.3%で世界28位に沈む。1位米国テスラ126万台、2位中国BYD86万台とは比較にならない(マークラインズ社調査)。
今回の新戦略では、26年までの短期間で、2.4万台から60倍の150万台に増やすというが、先行するテスラやBYDもそれまでにはさらに生産台数を大幅に伸ばすため、トヨタは依然としてかなり後方を走る状況になるのは確実だ。
しかも、テスラですらEV生産2万台規模から126万台に増やすまで9年かかった(日本経済新聞デジタル)。トヨタの本格的EV生産の立ち上げはテスラ以外の後発メーカーとの比較でも3年遅れ。既に価格競争が激化する状況だ。作れば売れるという保証もない。
そもそもトヨタにはまだまともなEVを作る技術もない。昨年鳴り物入りで出したbZ4Xは発売即リコールで、再販売後も評判は最悪だ。
テスラは、ギガプレスという大型の鋳造機を使い、車のボディをほとんど溶接なしで製造して世界を驚かせた。メキシコの新工場では、主要部品ごとに塗装や内装を施してから完成車に組み立てる新プラットホーム採用で自動車製造技術を根本から変える。これにより製造コストは半減するという。製造技術でもトヨタは完全に負けたのだ。
トヨタのEV嫌いで、電池の王者パナソニックは大口需要を確保できず世界トップから4位にまで落ちた。モーターのニデック(旧日本電産)も日本を見捨てた。トヨタが誇る世界一のサプライチェーンもEVでは全く役に立たない。