■スマホと距離を置く

 PR業の40代女性がかつて勤めていた会社はサークル活動が活発で、イベントがあった日は写真が大量アップ。半分仕事、という意識があったのでガン無視はできず、みんなに合わせて「超いいね!」の顔マークをつけていた。内心では「私のことは放っておいて」。

 独立した現在、“スルー願望”は皆無だ。アイドルの推し活で知り合った友人たちとのグループLINEがいくつかあるが、「向いている方向が同じ。反応がなくても気にならないし、相手もそう思っている。『スルーして』と思う相手だったら、(関係を)切ってますね」。

 公認心理師の潮英子さんは、「対面では気の合わない人とはそれなりの関係になるが、オンラインでは容易につながり、また小さな集団として形成されやすい。その中で浮くことに抵抗感を覚え、同調するのもストレスで、スルー願望が生まれてしまう」と指摘。一つの対策として、「即レスができないタイプ」のアピールを提案する。「デジタル音痴のふりをしたり、だれかのせいにするのもいいですね。『夫が健康オタクで、スマホは体に悪いからと、使用時間を制限されちゃって』というように」(潮さん)

 日本デジタルデトックス協会エグゼクティブ・プロデューサーの森和哉さんは、協会の名称である「デジタルデトックス」を勧める。

「スマホなどと一定期間距離を置くことでストレスを軽減し、現実世界でのコミュニケーションや自然とのつながりにフォーカスする取り組みです。私は夜11時から翌朝8時まではデジタルデバイスを見ないようにしていますが、それだけでもずいぶん違います。寝室に持ち込まないところからまずは始めてみてはいかがでしょうか」

 さらば、“スルー願望”。(ライター・羽根田真智)

AERA 2023年4月17日号