注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2024年12月23日号より。
【貴重写真】和服じゃない!スマホ片手にデニム姿の藤井聡太さん
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2024年、日本将棋連盟と阪神甲子園球場はともに100周年を迎えた。その記念として12月8日、甲子園球場・貴賓室において、藤井聡太七冠(22)と羽生善治九段(54)の対局がおこなわれた。
「100年に一度の対局なので、大変緊張しました」(藤井)
バックスクリーンのメインビジョンなどには、対局の映像が映し出された。スタンドには4千人近い観客が集まり、谷川浩司十七世名人や久保利明九段による大盤解説を見守った。またネット中継によって、世界中の将棋ファンがリアルタイムで観戦した。
非公式の早指し戦とはいえ、対局に向かう両者の姿勢はいつもと変わらず、真剣そのもの。藤井七冠先手で角換わりから、互いに攻めの銀を手早く中段に繰り出すスリリングな進行の末、結果は120手で羽生九段が勝った。
「時間の短い将棋の中にしては、自分としてはうまく指せたかなと。今回は100周年という記念といいますか、お祝いなんですけども。藤井さんからお祝いをいただいたような気持ちです」(羽生)
藤井七冠が先手で敗れることはめったにない。
「こういった特別な素晴らしい舞台で対局をさせていただいて、本当にいい経験になりましたし。また対局の方は、羽生九段の強さを改めて身にしみて感じるような形にはなってしまったんですけど。とても勉強にもなったかなと思っています」(藤井)
甲子園での将棋の対局は、終戦後まもない1948年、松田辰雄八段-大山康晴八段戦(肩書は当時)以来2回目となる。将棋と野球、どちらの分野においても、ここ百年の歴史の中で最大の試練が訪れたのは、戦争時だった。平和な世が続き、節目の年にはまた、甲子園で記念対局がおこなわれる未来を願いたい。
「ぜひ、阪神(タイガース)の方も応援してください」(羽生)
(ライター・松本博文)
※AERA 2024年12月23日号